ビジネス

2019.05.13

今後、必要なのは学生のコミュニティ。福岡がスタートアップ都市になるための課題と展望

F Ventures代表、両角将太

ベンチャー企業が集まる街としてのポジションを確立した福岡市。2012年に「スタートアップ都市宣言」を行い、それ以降毎年50〜60社が市内へ進出、2017年にはメルカリやさくらインターネット、ピクシブといった大手IT企業も次々と福岡に拠点を置くと発表した。

その1年前の2016年に、シードステージのスタートアップに特化した福岡発のベンチャーキャピタル「F Ventures」は設立された。

同社代表の両角将太は福岡出身、創業・シード期のスタートアップ企業の支援や投資育成業務を手がけるサムライインキュベートで経験を積んだあと、「福岡を盛り上げたい」という純粋な思いから「F Ventures」、そして九州の学生に対象を絞ったスタートアップイベント「TORYUMON」を立ち上げた。

高校・予備校卒業までを福岡で過ごしたこともあり、両角の福岡への思い入れは人一倍強い。サムライインキュベート入社後も、ビジネス・プライベート関わらず3ヶ月に一度のペースで福岡に戻っていたという。F Ventures立ち上げの前から、東京からスタートアップ関連のゲストを呼んでイベントを開催したこともあった。そうした経験から、「福岡のために、自分にしかできないことがあるのではないか」と考えるようになった。

創業特区、福岡の課題と強み

「2014年に福岡が創業特区になり、市や民間の動きがだいぶ変わりました。ただ唯一、シード期の企業にマネーが流入していないところが懸念点だったんです。そこに課題感を感じ、ベンチャー企業に対して投資やコミュニティ作りを行っていくことになりました」(両角)

福岡は起業に適した土地だと両角は語る。まずはそのコンパクトさがメリットだ。東京のベンチャー企業が集まる場所といえば、六本木や渋谷、目黒、最近だと五反田などがあるが、エリアごとに分散してしまっている。一方、福岡のオフィス街はまとまっており、街中で投資家や起業家を見かけることも別に珍しいことではないという。

コンパクトだからこそ、東京よりも人間関係に温かみや優しさを感じることもあるそうだ。東京よりも、飲みの場からビジネスの話に繋がりやすく、そこから深い関係になることも珍しくない。

また、行政とベンチャー企業の距離が近いことも特徴だ。コンパクトにまとまっているため、地域ぐるみで規制緩和や実証実験がやりやすい。屋台で導入されたLINE Payや、メルカリが手がけるシェアサイクルのメルチャリの実証実験も福岡で実施された。しがらみが少ない分、行政がリスクを取って、新しいアクションを起こせるという地域性がスタートアップの盛り上がりを後押ししているそうだ。
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文=大木一真 写真=小田駿一

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