ビジネス

2019.05.11 11:45

GAFAに「U」が加わる日は近い? ウーバー上場の快進撃

ウーバー共同創業者のライアン・グレーブズ(右)とダラ・コスロシャヒCEO(2019年5月10日撮影、Getty Images)


まず、赤字の規模も半端がないという指摘だ。アマゾンは9年目には黒字に転じ、10年目にも600億円の当期利益を稼いでいる。ところがウーバーは、去年は1兆2000億円の売り上げを上げたものの、4000億円の経常赤字。10年目の今年に入って、最初の3カ月ですでに3000億円の経常赤字を計上し、この赤字増大傾向は止まらない。
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2017年に、パワハラやセクハラスキャンダルでCEOが解任されたことも、いまだに尾を引いているし、グーグルの自動運転ソフトウエアの一部がウ―バーに盗用されたとの告発も、企業イメージを大きく傷つけた。後発のライバル「リフト」のほうが、若い人を中心に企業イメージはよく、両方走っているならリフトを使うという人は少なくない。

しかし、皮肉なことに、今回のウーバー上場がひときわ注目されたのは、リフト社が、この3月に先んじて上場を果たしてマーケットシェア拡大に挑戦したが、株式公開戦略に失敗してあっという間にピークから2割も値下がりをして、投資家をがっかりさせたたことが背景にある。

具体的には、主要投資家に上場後の急な売り抜けをあらかじめ断る条項を用意しながら、ジョージ・ソロスやカール・アイカーンなど、ヘッジファンド投資家にルールの盲点を突かれて売り抜かれ、価格が一気に下げ基調になってしまったとも、WSJは解説している。
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今回、先に綱を渡らせたウーバーは、リフトが転んだところを見計らい、それを教訓として強靭な法務チームを結成し、上場に臨んだと報道され、それゆえに、リフト上場でがっかりした投資家が今度こそはとウ―バー・フィーバーに燃えている。

孫正義は「Tech Tycoon」

アメリカはこのところ、50年来の好景気を実現しているが、一方で、中国との貿易交渉に不安を残し、株式市場はおだやかではない。トランプ大統領の、対中国の史上最大の関税の引き上げは、今週に入ってかなり市場に厚い雲を覆わせてしまった。

WSJは、10兆円のビジョンファンドを操るソフトバンクが、ウーバーの筆頭株主(8000億円をこれまで投資)であることが心強いプラス材料だとしている。ソフトバンクは、パワハラでその座を追われた創業CEOトラビス・カラニックの辞任の後にウ―バーに入ってきた。

起業アイデアは創業者のものだが、企業をこのスピードで育て、後発が入って来てもマーケットシェア7割を維持しているのは孫正義のリーダーシップとでも言わんばかりで、今回WSJは、孫正義を「Tech Tycoon」(技術の大将軍)とさえ形容した。Tycoonという英語は、日本語の「大君」から来ており、まさにウーバーの株式上場フィーバーは業績や業容よりも、「ヘッジファンド対大将軍」の戦いになりつつある。

繰り返すように、アメリカは、アマゾンの成功の面影を確実にウーバーに見ている。そして確かに、孫が買いに回っている銘柄であるということが高揚感を掻き立てている。このことからも、ウ―バーはますます資金調達力でスピードを競い、ライバルを凌駕し、自動運転を中心とした新技術と新ビジネスに加速的に参入していきそうだ。GAFAの1つに「U」が加えられる日が来るのは近いかもしれない。

連載:ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信
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文=長野慶太

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