──育った環境は、あなたが今のあなたになる上で大きく影響していますか? もしもトルコで育ってトルコの大学に進学していたら、どうなっていたでしょう?
トルコで大学に入るのは、宝くじに当たるようなものなんです。毎年150万人が入試を受けるのに、大学に入れるのはたったの30万人なんです。それに、学生が5つ希望科目を選んだ中から、政府が受講科目を「割り当てる」んです。また、ニュージーランドでは政府が起業も支援してくれますが、トルコだったらどうなっていたかわかりません。私の人生はまったく違ったものになっていたと思います。
──あなたの今度のビジネスの、複利面でのユニークな点は何かありますか?
社員同士が、お互いの給料を知っていることだと思います。「透明給与」制度を採用しているんです。
社員が私のところにやってきて、自分は誰それと同じ貢献をしているのに給料が少ない、それはフェアでないと訴えたら、私は、確かめた上で納得すれば、その社員の給料をアップしますよ。私が約束を守り、みんなが楽しく働ける。そのために5000ドル余計にかかるのなら、文句を言う筋合いはありません。
──ニュージーランドで「透明な給与体系」を取っている会社はほかにありますか?
何社かはあるでしょうけれど、多くはないと思います。実は、給与の透明性が全体的な生産性を引き上げるということは、裏付けとなる調査結果があるんです。ほかにも、「週4日働いて3日休む」ことで生産性が上がることを証明したデータもあります。
従業員から最高の生産性を引き出すためには、毎日9時から5時、週5日間で毎週40時間働かせなければならないと思っている企業がとても多いですが、データを見ると、休息をしっかり取った従業員や、目的意識を持った従業員の生産性が向上することがデータで証明されています。
──テクノロジーの世界で一番難しいことは何でしょう、そして、なぜあきらめないでやって来られたのですか?
業界が常に変わり続けていることでしょうね。コードをひとつ修復したら、それが別の何かを壊してしまう。私たちにとっては、大事なのはお客様との関係を築き続けることです。売り買いだけの関係ではなく、「パートナーシップ」が築けていれば、最悪、締切から2〜3週間遅れても、見放さずにいてもらえる。こうした関係を維持しておくことは本当に大事です。
お客様が支えてくれるようになったときこそ、売上げが本当の意味で上がっていきます。テクノロジー業界は難しい世界ですが、支えてくれるお客様がいればバランスが取れます。私にはたくさんのお客様が世界中にいて、友人になった人も大勢います。
──2050年の自分を予想してみてください。
私は、ええっと……56歳になっていますね。その頃には、本気で「エコテクノロジー」に取り組みたいと思っています。私が心からパッションを注げるのは、環境をよりよくする技術だと、最近気づきました。
私は幸いにして世界で一番美しい国の一つ、ニュージーランドで育ちましたが、これだけ美しい山や川があっても、やはり大きな環境問題を抱えています。環境改善に役立つ世界最先端のテクノロジーを生み出すチャンスを、探っていきたいと思っています。