ビジネス

2019.05.08

カルロス・ゴーン逮捕は「文化の衝突」か?

Getty Images


(以下、セーラ・パーソンズ氏の回答)

多くの西洋人が、ゴーンの逮捕は日本人が、部外者と身内を不平等に扱った結果であり、ゴーンがしたことは、西洋でのビジネスの常識に照らせば受容可能だ、と考えているようです。たとえば、ゴーンが期待した高い報酬や福利は、西洋では受容される「個人的権利」だと。

しかし、カルロス・ゴーンという人物は、個人主義の傾向がとりわけ強いビジネスマンなのです。そして彼が作り上げた「自分が基準」の企業文化は、日本のビジネス文化にはまったくそぐわないものでした。

日本におけるCEOは、組織全体のことを考えること、個人主義的なふるまいではなく、あくまでも「総意」と他者との関係構築を通して、社員や株主から尊敬されることを期待されます。

日本のCEOはまた、組織から抜きん出ることを期待されません。私が心から尊敬する経営者に稲盛和夫氏がいますが、彼がJALを破産から救ったのも、日本的な、組織全体に目配りした方法によってでした。海外からやってきた経営者で稲盛氏のような人を、私はこれまで聞いたことがありません。

日本人がゴーンに下した懲罰の軽重については、ゴーンほど実業界に影響力を持つ『日本人ビジネスマン』逮捕の例がこれまでないため比較が難しいかもしれませんが、企業文化や社会規範に同じように背いた日本人に対する処遇に比して、決して厳しいものではないと思います。

しかしながら、西洋人の一人として私も、彼が厳しい拘禁状態にあることは受け入れられません。人権としての「自由」をとりわけ重要視する西洋の価値観に照らした場合、拘禁は非常に忌まわしいことだからです。

とくに日本が今、多様な人種や民族、性別から多様な才能を登用したり、これまでとは異なった多様な方法によるビジネス運用を視野に入れることで経済を活性化し、本当の意味での「グローバル化」を目指す必要がある現状、これは憂慮すべきことだとも思います。

ですが、異文化をまたいだビジネスでは、私は、こういった「決裂」を非常に頻繁に見てきました。いずれの場合も原因は、相手の文化がどう考え、ふるまうのかへの理解がお互いにないこと、そして、これまでとは違ったやり方に挑戦してみようという意思の欠如が原因です。

構成・翻訳=石井節子

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