しかし、アルファベット傘下のウェイモは、異なる考えを持っている。過去10年に渡って自動運転技術の開発を行ってきた同社は、レーザーを使って車両の周囲360度の3Dモデルを生成する次世代LiDARを開発した。
ウェイモは新型LiDARを自社で開発し、その詳細を明らかにしていないが、最近サンフランシスコのベイエリアでテストを開始した。
同社は、FCAのミニバン「クライスラー・パシフィカ」に新型LiDARやカメラ、レーダーを搭載してテスト走行を行っており、今後はSUVタイプのEV「ジャガーI-PACE」にも搭載する予定だ。
ウェイモは、新型LiDARが現行製品に比べてどれだけ測定距離(現行製品は300メートル)や耐久性が向上し、コストが安くなったか明らかにしていないが、かつて同社CEOのジョン・クラフチックは、雪や悪天候でも自動運転を可能にするためには、センサー性能を向上する必要があると語っていた。
「我々は新しいLiDARとレーダー、カメラを開発する。特に注力するのが、あらゆる季節に対応した自動運転技術の開発であり、真っ先に取り組むべき重要な課題はセンサークリーニングだ」とクラフチックは述べている。
マスクは、これまでにもLiDAR不要論を唱えており、水素燃料電池や証券取引委員会と並んでLiDARを嫌悪しているようだ。
マスクはカンファレンスにおいて、自動運転車のビジョンシステムに必要なのは、カメラとレーダー、超音波センサーだけだと明言した。
しかし、マスクの考えはウェイモのみならず、自動運技術を開発中の全ての主要企業の考えと食い違っている。
マスクは、アナリストに対して次のように述べている。「LiDARは不必要であり、高額な付属品を沢山取り付けるようなものだ。付属品は1個でも無駄だが、LiDARは無駄が多すぎて馬鹿げている。今にわかるだろう」
LiDAR製造でデトロイトを再生する
確かにLiDARには課題がある。例えば、柔らかい物体と堅い物体を見分けることがうまくできず、コストが高く、電力消費も大きい。
それでも、カメラやレーダーと連携して走行中の車両の周囲を測定し、あらゆる照度で点群データを利用した高精度3D地図を生成することで、自動運転車は路面状況を把握することができるのだ。
ウェイモは、マスクの発言に対して何もコメントを出していないが、2017年に投稿したブログ上で、LiDARに対する信念を次のように述べている。
「LiDARは、歩行者と絵に描いた人物を見分けることができる。また、3Dで物体の形状を把握したり、静止している物体を検知したり、距離を正確に測定することができる。人間の五感のように、全てのセンサーを組み合わせることでよりパワフルになり、利便性が増す」
ウェイモによると、新型のLiDARやカメラ、レーダーなど、自動運転車に必要なテクノロジーを取り付ける工場をデトロイトに設置する予定だという。
「我々は、理想的な施設をデトロイトで見つけることができ、とても興奮している。我々は、American Axle & Manufacturingと提携して現在の設備を新たな用途で使うために改良し、自動車業界で多くの雇用が失われたデトロイトで新しい職を提供していきたい」