ビジネス

2019.05.07

熊本本拠のシタテルが考える、どこでも働ける時代の「オフィスのあり方」

シタテル代表取締役/CEOの河野秀和

リモートワークを奨励するほか、会議はオンライン上で行う。中には本社オフィスを全面廃止にし、WeWorkに移行する企業も現れるなど、ここ数年でオフィスに求められる役割が変わり始めている。

「オフィスは働きやすい場所ではなく、自然と来たくなる場所にすべきかな、と」

そうした時代において、シタテル代表取締役/CEOの河野秀和はオフィスの役割をこう語る。同社は2019年2月、本社オフィスを移転。新たなオフィスはドアがないほか、仕事内容に合わせて働く場所、働くツール、働く時間などを自由に選べるABW(Activity Based Working)が取り入れられている。

今回、河野に新たなオフィスの設計でこだわったポイント、いつでもどこでも仕事ができる時代におけるオフィスの意義を伺った。

オフィスは「来たくなる場所」にすべき

──シタテルは創業から一貫して本社機能を熊本に置いています。河野さんが熊本出身であることも大きいと思いますが、何か理由があるのでしょうか?

そうですね。熊本からスタートしているので、九州にも工場が多く、クラウドでソフトウェアを導入してもらっている。熊本に本社があることでエラーが発生したらすぐにコミュニケーションをとることができますし、彼らの要望をもとにシステムをタイムリーにアップデートしていくこともできます。

あと、熊本は非常に事業開発に集中しやすい。都会だと良くも悪くも雑多な情報が耳に入ってきてしまい、なかなか集中できない。また都会は便利なサービスが溢れていて「人も情報もモノも」何かに困ることはありません。でも熊本は違うんですよね(笑)。

熊本はリソースが少ないので、自ら情報を集めていったり、積極的に新しいサービスを使ったりしないといけない。都会と比べて物理的に不利な状況にあるのですが、それが逆にインターネットサービスの精度を高めていくのに効果的です。結果的にこれまでの新サービスや「SPEC」も熊本から生まれています。

──今年の2月にオフィスを移転されています。ABW(Activity Based Working)を導入するなど「働きやすさ」にこだわっているように感じられますが、オフィス設計でこだわった部分はどこでしょうか?

まずひとつは「オープンであること」。今回はひと・もの・情報が「循環(滞留しない空間)」をテーマに、耐震性にも優れた強化ガラスを全面に採用し、どこにいても社員同士が見える設計にしています。そうすることで人がいることが認識しやすく心理的に安心することができ、コミュニケーションも円滑になっていくと思います。


シタテルの新オフィス

またドアのないオフィスにし、社内の情報も流通させやすくしています。いまの時代、電話で大事な話をすることは少なくなっています。基本的に機密性のある情報はPCの中にあるので、空間に機密性を求める必要はない。そもそもオープンな空間で話せないことを抱えていること自体が問題なので、オープンというテーマを掲げて、オフィスを設計しました。

どこにいても見えること、ドアがないことで必要な時に最適なコミュニケーションを取れる空間になっていると思います。他に意識したのはオフィスを「自然と来たくなる場所」にすることです。
次ページ > 深く思考する「ZENルーム」

文=新國翔大 写真=小田駿一

ForbesBrandVoice

人気記事