他者の幸せを祈ることで心の健康が改善 新たな研究結果

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興味深いことに、参加者の個性は慈愛グループが見せた反応に影響しなかった。つまり、元々持っているマインドフルネスや自己中心性の程度にかかわらず、慈愛の心を持つことは効果を発揮していたのだ。

ここで、社会的比較を通し相手を見下すよう指示されたグループの結果は、全く意外ではなかったことを指摘したい。相手を見上げるか見下すかにかかわらず、社会的比較は心の健康に悪影響をもたらすことがこれまで示されている。ソーシャルメディアが心の健康を悪化させていることは複数の調査で指摘されており、その原因はソーシャルメディア上でさまざまな方向性の社会的比較が頻繁に行われていることである可能性が高い。

ただし、この調査は非常に短期的なものであることを心に留めておくこと。この行動を数週間、あるいは数カ月続けた場合、どのような効果が出るかを見極めることが必要だ。しかし、他者の幸せを願うことを毎日の習慣とすれば、幸福感は向上するばかりだと推測できる。

科学誌サイエンス・アドバンシズに2017年に掲載された論文などの複数の調査では、慈愛を使った瞑想(めいそう)などさまざまなタイプの瞑想が脳のレベルで人を変えることができると示された。研究の著者らは「100年にわたる教育心理学、現代神経科学、そしておばあさんは全て、あることに合意している。それは、練習を通してスキルは向上し、そのうち自然にできるようになるということだ」と述べている。

最後に研究者らは、チベット仏教僧サキョン・ミパムの「惨めになりたいのなら自分のことを考えなさい。幸せになりたいのなら他者のことを考えなさい」という言葉を引用している。この言葉こそ、同調査結果を見事にまとめたものだ。

翻訳・編集=出田静

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