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妙心寺退蔵院にて、あめ玉で禅を体験する「ひと粒の禅」を体験しているところ

トラベルオーディオガイド「ON THE TRIP」創業者の成瀬勇輝が、お寺や神社、美術館などで第一線に活躍するキーパーソンに訪ねてそのビジネスモデルを探求するシリーズ。第一弾は、日本を超え海外でも活躍する、妙心寺退蔵院の松山大耕副住職だ。

突然だが、最近みなさんは何かひとつのことに集中して取り組めているだろうか?  情報量が爆発的に増えた“情報過多”の時代において、ひとつのことに集中し続けるのは難しい。結局のところ「スマートフォンを見ながら」「音楽を聴きながら」など、作業をしながら別のことも同時進行で行う“ながら作業”をしてしまいがちだ。

だからこそ、「マインドフルネス」という言葉が市民権を得て、ビジネスシーンで禅や瞑想が大きなブームとなっている。瞑想とメンタルヘルスに特化したマインドフルネスのスタートアップ「Calm(カルム)」は最近、ユニコーン企業入りを果たし、話題を集めた。

最近ブームになってきているものの、なかなか日常生活に取り入れにくい。そんな禅や瞑想を身近に感じられるよう、京都の禅寺「妙心寺退蔵院」が面白い取り組みを始めている。それが、あめ玉で禅を体験する「ひと粒の禅」だ。


「ひと粒の禅」の中に入っているもの

これは7分間、あめ玉を舐めることだけに意識を集中し、内面へと向かい合うインナートリップを体験するというもの。料金は1回300円。仕掛けるのは、日本各地の寺社や美術館などのトラベルオーディオガイド「ON THE TRIP」創業者の成瀬勇輝,「妙心寺退蔵院」副住職の松山大耕だ。

向かい合うと、「この取り組みのきっかけになったのは去年の夏、イスラエルを訪れたときですよね」と語り出す、成瀬と松山の2人。今回、「妙心寺退蔵院」を訪れ、取り組みを実現するに至った経緯について対談してもらった。



観光は「Seeing」から「Doing」、そして「Being」へ

松山:観光のそもそもの始まりは宗教観光にあります。日本では伊勢参り、海外ではサンティアゴ・デ・コンポステーラなどがそう。聖地巡礼が観光の始まりだったわけです。

それが時代とともに旅の形も変化してきて。今から30年前の観光は「Seeing(観ること)」が大きなテーマになっていました。京都で言えば、金閣寺、銀閣寺、清水寺、二条城といった有名な観光スポットを出来るだけ効率よくまわり、写真を撮る。それが基本的な観光スタイルになっていたんです。

そのスタイルも、観光するグループの少人数化とともに数十年前から変わり始めて。つぎは観光地で何かを体験する「Doing(何かする)」が大きなテーマになったんです。例えば、舞妓さんになってみる、和菓子をつくってみるといった体験ですね。

そして現在。観光のスタイルはもう一歩先に進み、今は「Being(何がしたいか)」になってきた。自分は何のために生きてるのか、なぜこの仕事をしてるのか。心の琴線に触れるような「こころのお土産」を得て、日常生活に戻っても、それを振り返れるものを求め始めているな、と感じています。

だからこそ、私たちも単に面白い体験を提供しているだけではダメで。面白いだけだったらリピートしてもらえず、他にエキサイティングな体験があれば、そっちに行かれてしまう。とはいえ、Beingだけだとハードルが高い。ハードルを低くしながらも、単に面白いだけでは終わらない体験を持って帰ってもらいたいと前から思っていたんです。

そんなときに、イスラエルで成瀬くんとお会いして。話をしていたら、あめ玉で禅をする取り組み「ひと粒の禅」の話をもらい、個人的にこれはDoingとBeingをミックスしたもので面白いと思いました。ぜひやってみたいということで、話が進んでいきました。

構成=新國翔大、写真=ON THE TRIP提供

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