ビジネス

2019.05.02 15:00

見返りファーストだった僕を変えた人生最高の一冊。「イノベーション・オブ・ライフ」

なぜ、本や映画といった類の「作品」と呼ばれるものが生まれたのか。きっとそれは、認知されるべき美しく、賞賛に値するエピソードやストーリーを、一人でも多くの人に届けたいと考えたからではないだろうか。より多くの人に届けることで、社会をより良いものにしたい、作り手がそう考えたからではないだろうか。

今回の企画、「私が愛した一作」も、思いは同じ。様々なジャンルで一流とされる人間の「財産」を解放することで、一人でも多くの読者にとって、価値がある情報を届けたいからだ。

初回は上場企業の最年少事業部長として辣腕をふるうガイアックス社の管大輔氏だ。彼に「人生最高の一冊を教えてほしい」と問うと、二冊の候補が上がってきた。

二者択一の中で彼が選んだ一冊、それが、
「イノベーション・オブ・ライフ ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ」だ。



マネジメントに悩む日々を救った一冊

この本は「幸せで充実した人生を送るにはどうすれば良いのか」について、学生と話し合う講義を書籍化したものです。

出会ったのは、私が事業部長に就任した頃。幸福経営を学ぶ中で、おすすめされました。

大げさに聞こえるかもしれませんが、この本と出会い、人生の中の優先順位が変わったんです。それまでは、自分のことをわかりやすく評価してくれる人、すぐに見返りがありそうな人のことを大切にしていました。会社の上司やクライアント、その他社外の優秀な方々など。

でも、この本を読んで、大切にすべき人は、家族や親しい友人であることに気づいたのです。彼らは自分のことを大切に思ってくれているからこそ、評価的な態度を取らない。その思いに甘え、時間やエネルギーの投下先として、後回しにしがちでした。

でも本当に困難な時、全てを失った時に支えてくれるのは、家族や友人。わかりやすい評価をくれる人ではなく、自分を一人の人間として大切にしてくれる人を、今この瞬間から大切にしようと思ったのです。

その結果、マネジメントスタイルも大きく変わった。それまでは、とにかく業績を上げることだけにフォーカスする自分がいました。数字が全てを癒す、という言葉を盲目的に信じて。

でも、一人一人に人生があり、大切にすべき人がいる。生きる目的も働く目的も違う。人生の優先順位が違う。だからこそ、それぞれのメンバーの生き方を理解し、後押ししてあげる思想を持つことだ必要なのだと学べたと思います。そしてその方が、結果的に組織を良い方向に導いてくれることにも気づけたのです。

仕事で成果を出すことしか頭になかった当時の自分にとって、人生を見つめ直すきっかけとなり、マネジメントの捉え方が変わった本。今の自分と組織を作り上げたベースにこの本があることは間違いないですね。


今、管氏は家を持たない「アドレスホッパー」として、海外からマネジメントを行なっている

僕の心を動かしたパワーフレーズ

「仕事をすればたしかに充実感は得られる。だが家族や親しい友人と育む親密な関係が与えてくれる、ゆるぎない幸せに比べれば、何とも色あせて見えるのだ」

「大切な人との関係を育み、築いていかなければ、長い人生の帰路で出会う困難を乗り越えようとするとき、そばにいて支えてくれる人がいなくなり、大切な幸せのよりどころを失うことになるだろう」

「研究員としての姿が、彼女のすべてではなかった。彼女は母であり、妻でもあった。彼女の気分や幸せが、また自尊心が、家族に大きな影響をおよぼしていた。わたしは彼女が毎朝家族に「行ってきます」と言って仕事に向かうとき、どんな様子だろうと思い浮かべた。」

(2012年翔泳社 著者:ジェームズ・アルワース、カレン・ディロン 「イノベーション・オブ・ライフ ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ」第二部、第二構、第五構より)

成果を出すことは大切。ただ、それよりも大切なものが、もっと手前にある

これからマネジメントに携わる人、携わっていきたいと考えている人。そして、「任命されたけど正直、苦しい」という方にぜひ、読んでほしいですね。

きっとリーダー、マネージャーになる時、「成果を出すこと」を一番のモチベーションに置くと思います。それ自体は悪いことではないですが、行き過ぎると大切なものを失うことにも繋がります。まさに僕がそうでしたから。

自分のスキルを高めること、会社を成長させることが一番だと思っている人にこそ、手に取って欲しい。この視点があるだけで、一緒に働くメンバーの幸福度は高まるはずだし、結果として成果を手に入れられると思うので。


編集・後藤亮輔

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