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2019.05.06 11:30

「百商百経の未来が来る」最先端の過疎地を担ぐウダツアップ

柴田義帆/ウダツアップ 代表取締役社長

個人が百の商いを兼業し、百の経済圏に所属する未来、「百商百経」。 過疎地域の使われない遊休資産を「共遊」する仲間を集め、そんな未来を実現する元バンドマンがいる。


「空き家を改修して、外国人や変わった人を連れてくる、面白いやつがいる」。徳島県美馬市の市職員としてサテライトオフィスの誘致を担当していた石田貴志は柴田義帆について、そう聞いていた。

柴田は2014年に、地元出身で漫画家の妻、美智代と結婚し、美馬市にやってきた。同年、空き家だった古い宿をリノベーションしたゲストハウス「のどけや」をオープン。

15年にハンモサーフィン協会を設立した。同協会は、のどけやのように地域で使われていない空き家やスペースなど「遊休資産」を会員同士で「共に遊ぶ(=共遊)別荘・スペース」として再生、利活用するプラットフォームだ。

会員は月額1万円で、様々な拠点に宿泊し事業にも利用できる。多拠点をハンモックでサーフィンするように行き来する会員(=ハンモサーファー)をネットワーク化すれば、地域間交流が活発になる。

そうして、個人の新規事業支援や地域課題解決につなげるのが狙いだ。エアビーアンドビーもまだ日本で一般的ではなかった時に、日本発シェアリングエコノミー・サービスの先駆けとなった。

美馬市は人口3万人弱で過半数が65歳以上。2040年には人口が約2万人まで減少すると見込まれる過疎地域だ。

のどけやは、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定された「うだつの町並み」沿いにある。江戸時代の豪商の屋敷が残る美馬市を代表する観光地だが、夜は静まり返り、外国人客はほぼ皆無だった。

しかし、柴田がエアビーアンドビーに掲載すると、外国人客の予約で3カ月先まで埋まった。

石田が驚いたのは柴田の先見の明と行動力だ。のどけやには柴田や美智代を慕って、外国人の観光客だけでなくアーティストやリモートワーカーらが集まった。夜はパーティー会場、昼は創作の現場となり、化学反応のようにプロジェクトが生まれ始めた。


のどけやで開かれたパーティーの様子。

ウダツミートアップという100人以上が集まるイベントが開かれ、近くに移住し店を開く人も現れた。

徳島県は、「Sansan神山ラボ」の神山町や美波町など、企業のサテライトオフィス誘致が活発だ。

美馬市も美馬地区の小学校5校が廃校になるのをきっかけに、15年からサテライトオフィス誘致に乗り出した。その担当者が冒頭の石田だった。

柴田の協力や総務省の促進施策の後押しもあり、美馬市には16年から3年で8社のサテライトオフィスができた。多くが柴田の活動に関心を持って来てくれたという。

「柴田さんのことを全員が100%理解するのは難しい。しかし、行政に頼らずにどんどん行動に移している。5年後、10年後、この町を守ってくれるのは柴田さんのような人だと思います」(石田)
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文=成相通子 写真=小田駿一

この記事は 「Forbes JAPAN 地方から生まれる「アウトサイダー経済」」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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