山川:日本では「出る杭は打たれる」という状況がありますよね。しかしアメリカをはじめとするグローバルな世界では、「出ない杭は打たれる」のです。杭を出さないと見て貰えない。見て貰えないと評価して貰えない。そこでポイントが入らない。だからこそどんどんアピールしないといけないんです。
このままではグローバルな企業に攻め入られて、日本企業は滅びてしまうでしょう。危機に瀕している今、日本の美学である「言わなくても分かって貰える」とか「阿吽の呼吸」とか、今まで良かれとされていたことが、通用しなくなっている。こういった日本の風土を変えるには、根本的な教育から変える必要があります。
例えば日本は元々が100点貰っていて、1日1日100点を守り通す。何かミスすると1点減点みたいな、そういう主義。一方でアメリカだと0点から始まるから、何かしないと、杭を出さないと見て貰えない。
伊藤:加点主義と減点主義の差は大きいですね。しかも日本の100点は、グローバルレベルで見れば既に100点ではありません。もうとっくにアウトレートなものになっている。でも日本企業の上層部にいる人々が、それに気付いてないのです。ひとつのアイデアとして、例えば若い起業家100人ぐらいを総動員して大企業のなかのメンバーに入れてみたら、彼らが異物として大企業に刺激を与えられるかもしれません。
山川:アメリカだと人種のるつぼがあって、小さい頃からいろんな人種の人たちと混ざって教育を受けているから、自分を含めて全員が異物であるという認識をしていますよね。そして異物を受け入れる土壌もある。
私の教えているバブソン大学は80カ国ぐらいから学生が来ていますから、キャンパスに行くと何語を喋っているか分からないぐらい。そのなかで自分のバックグラウンドや肌の色は関係がなく「自分はこういうものが大好きだ」ということを胸張って言う。コーディングなり、アニメなりオタクっぽいものであっても、そこを分かって欲しいと売りにいきますよね。
日本ではパッケージとしてレジュメがあって、オールラウンダーで、「これ全部できますよ」っていう売り方。アメリカは、これ全部できないけど、これに関しては「I’m the No.1」っていう言い方をするし、採用側も平均点よりもアウトライヤー、強みが何かを見る。
伊藤:すごく分かりますね。しかも日本人がゼネラルでフルパックを目指してもその基準が古いわけですから、スタンダード的に言ったら、世の中2.0、3.0なのに、まだ1.0の中の1.1、1.2を目指していることになる。だったらいっそ、やりたいことをやればいい。
ところが日本だと老いも若きも「何がやりたいか分からない」という人が結構います。「何でそう思うの?」と聞くと「上手くいかなかったらみっともない」と言うのです。
「見栄や恥も外聞もなく、ぽんとリセットして、上手くいかなければまた他のことをやればいい」「僕みたいにわざわざ、異業種に行ってもいいんだよ。根無し草と言われても、実績を他人の100倍出せば認められるから」というような僕自身の例を見せることで、ようやく納得する。
山川:周囲をうかがうことを止めて、常識はずれであることをバリューにするべきですよ。常識内の行動に終始していては壊れてしまう世の中になってきているからこそ、常識外れが常識になるんです。常識と非常識が覆ることは、イノベーションそのもの。非常識の感覚をポジティブに捉えられる人たちが集まって、そこで潮流を作っていけばいいんです。