科学誌のnpjデジタル・メディシン(npj Digital Medicine)に今年3月に掲載された新たな研究では、ユーザーが慎重になるべきだと示唆されている。同研究によると、こうしたアプリのうち現実世界での経験に基づいて設計されたものはほとんどなく、その大半は主張を裏付けるための信頼できる科学的根拠に欠けている。
研究者らはアプリの主張を評価するため、iTunesとグーグルプレイの2つの人気アプリ購入サイトから1435個の心の健康支援アプリを特定し、その中からランクが高いアプリを代表する73個を選出。アプリが効果をもたらすとされた症状には、うつ病や不安、薬物乱用など一般的な心の病から、統合失調症などあまり知られていないものまで含まれていた。アプリの65%近くは、アプリの使用により症状の診断や、症状・気分の改善、自己管理の促進が効果的に期待できると主張していた。
同調査の結果、効果を裏付けるため科学用語を使っていたアプリは44%だったが、こうした主張には「文献調査により有効だと確認されていない技術」が含まれていた。実際、発表済みの科学文献を引用していたアプリはたった1つだった。アプリの記述の中には科学的な文言が多く使われていたが、「質の高い根拠が記述されていることはあまりなかった」と同研究は述べている。
また、実際の体験を活用した設計や開発を行なっていると記述していたアプリは全体の14%と少数で、大部分は開発の一部に現実世界の体験が含まれない(あるいは少なくとも現実世界での体験について言及されていない)ことが示唆された。
アプリの宣伝には他に、科学的証拠ではなくアプリを使っている人から集めた意見(エピソードを交えたユーザーレビューなど)を使う手法があり、対象のアプリの32%が活用していた。
また、具体的な科学的手法を説明していたアプリのうち、証拠がない技法を挙げていたアプリは33%だった。