現状のイメージシステムは、写真を乗客名簿と照合する能力しかもたないが、新たなシステムでは、国際線に搭乗する人物の顔データを、数百万点のデータと照合するという。照合先のデータベースには、入国ビザやパスポートの申請書類に用いられた写真が含まれる。
トランプ大統領は3月6日、2021年までに全米トップ20の空港において顔認証システムを導入するという大統領令を出した。今後は米国の税関を通過する、全ての乗客が顔認証を受けることになる。
AI(人工知能)を用いた顔認証システムは、既に米国の15の空港に導入済みだ。これまで1万5000便以上のフライトで運用した結果、7000名を超える不法滞在者(オーバーステイ)を発見したという。
CBPは2018年度に、66万6582人が米国にオーバーステイしたと述べており、今回の顔認証システムの主要な目的は、不法滞在者を発見することだ。ビザが失効後も米国に留まる不法滞在者らは、ここ数年で不法移民の大半を占めるようになり、違法入国者の数を超えている。
しかし、政府の顔認証システムの強化については反対の声もあがっている。AIによる顔データの照合はプライバシーの侵害につながる懸念もあり、データが本来の目的以外の用途に用いられる危険もある。システムの運用に関わる人員は多く、そこにハッカーが紛れ込むリスクもある。
トランプが発表した資料には、このプロジェクトに関わる航空会社の顔認証データ活用に、制限を設けないと記されている。フォーブスはCBPに対し、運用ガイドラインの有無について尋ねたが、回答は得られなかった。
人権問題のエキスパートのEdward Hasbrouckは、米国政府が大量の顔データをコントロールすることに懸念を述べている。
「これまでなかったレベルで、国家が個人の情報を握ることになる。彼らはまず個人の旅行先を把握し、移動の詳細を知ることになる」とHasbrouckはメディアの取材に応えた。
「顔認証システムの運用は、出入国の管理以外の分野にも拡大し、人々の監視につながる危険がある」
CBPは現在のところ、顔認証データを保管するのはごく短期間であり、データは暗号化されていると述べている。