ビジネス

2019.04.26

iPhoneは人類最後のメガヒット商品だ──人々に愛されるブランドのつくり方

(左から)Zokei代表取締役 沼田雄二朗、FABRIC TOKYO CEO 森雄一郎、Takram ディレクター/ビジネスデザイナー 佐々木康裕


価値観を共有する身近な人から意見をもらい、少しずつ機能をブラッシュアップする。森は同様の手法を、自社内で実践している。FABRIC TOKYOでは製品を市場に展開する前に、まず従業員が繰り返し試着するのだという。

「例えば『気軽に洗うことができる』を売りにした製品なら、社員が何日も試着して、何回か洗濯までしてもらいます。こうしたプロセスを徹底するのは、お客様に熱量を伝えるためには、まず製品を手がける私たちが熱量を高く持たなければならないから。

プライベートでも使いたくなる製品をつくっているのなら、自然と仕事にも熱が入りますよね。私がいつも考えているのは、『社員が飲み会で自分の仕事をどのように語るか』。ブランドイメージを大きく決定づけるのは、一人ひとりのちょっとした発言なのではないでしょうか」

自社のやり方で世界に挑戦できる時代



Zokei代表取締役 沼田雄二朗

SNSによって情報発信のハードルが下がったことで、「マニアックな需要」を対象にしたビジネスが成立するようになった。しかし佐々木は「それは裏を返すと、世代や年齢を超えて誰もが熱狂するメガヒット商品が生まれにくくなることでもある」と話す。「いま我々が手にしているiPhoneが、人類最後のメガヒット商品になるのではないでしょうか」

しかしそれは、人々の個性にマッチした製品開発、そして拡大が可能になるということだ。

「例えば、左利き用の釣竿をD2Cで販売する会社があるとします。『左利き』かつ『釣りが好き』な人口は国内だとそう多くはないですが、世界規模で考えればたくさんいるかも知れない。ECを通じてどこからでも受注でき、SNSで世界中の評判を知ることができる現在は、日本で成功してから海外で……と段階的なグローバル展開は必要ありません。一気に世界中の人にアクセスできるんです」

「目の前の個人を幸せにする」ための小さなプロダクトが乱立するこれからの世界。それはメガヒット商品を生み出す企業がいなくなるというよりも、各社がそれぞれ自社に適したチャネルを発見し、世界に打って出ることができる時代なのかもしれない。創業者の想い、そして目の前の一人ひとりに向き合うことができる会社こそ、「愛される会社」なのだ。


WORK MILL with Forbes JAPAN ISSUE 04
発売日:2019年4月11日
価格:980円(908円+税)
判型:B5変形 無線綴じ
ページ数:96ページ
発行元:アトミックスメディア(発行人:上野研統)
発売元:プレジデント社
編集企画:オカムラ(編集長:山田雄介)
販売方法:全国書店・インターネット
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文=野口直希 写真=ラン・グレイ

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