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積極的に機会を探し、冒険的にリスクをとる。生産性向上のためには、そんな「起業家精神」が欠かせない。では、それを100年持ち続けるにはどうすればいいのか。「働くと学ぶ」をテーマに掲げるForbes JAPAN6月号(4月25日発売)では、その答えを見つけるべく世界の有識者を訪ねた。

副編集長の谷本有香は、TEDの人気プレゼンターで、マーケティング・コンサルタントのサイモン・シネックと対談。なぜ人は「WHY」に動かされるのか、話を聞いた。


谷本有香(以下、谷本):2012年のベストセラー『WHYから始めよ!』の発売以来、多くの企業やリーダーたちに、サイモンさんが唱えるWHY、HOW、WHATの順に考え、行動の指針とする「ゴールデン・サークル理論」が影響を与え続けています。その考え方のプロセスは大変新鮮で、WHYを重視して製品を購入するなど、足元の消費行動もその理論に移行していると感じます。

最近では、その「ゴールデン・サークル理論」をどのように実践的に使うのかを説いた『FIND YOUR WHY』を出版されました。前著から7年経て、世界情勢も経済活動も、私たちを取り巻く環境は大きく変わっていますが、そんな時代背景と共にサイモンさんが唱えるWHYに何か特別な変化は感じられますか。

サイモン・シネック(以下、サイモン):根幹の部分でWHYに変化はないと思います。WHYは私たちが生きていく上で、必要かつ重要なQuestionなんです。

“WHY=Who you are”すなわち、自分が何者なのかという「個」への問い掛けであり、それによって「真の自分」を発見することができるんです。また、それは「自分を信ずる」ことにも繋がります。そして、この摂理は、どのような時代の変遷を経ても、私たち人間が生きる上で変わらない真実なのです。

谷本:企業の場合は、理念や大義があると多くの人たちを巻き込むことができるということでしたよね。前著では、WHYからビジネスを始めている企業として、アップルやスターバックス、サウスウエストなどを取り上げていますが、最近の面白い事例はありますか。

サイモン:私が好きなレストランに、サステイナビリティーをコンセプトにした「sweetgreen」というサラダ専門店があります。資本主義の中央集権的なマス・フランチャイズ・ビジネスではなく、それぞれの地域で育つ野菜を中心に、ローカル性を活かした個性豊かなメニュー展開を特徴にしています。各店の壁には、地域のアーティストの作品を飾って彩ります。つまり、「地域を応援したい」というWHYで始まる企業なのです。

利益中心にビジネスを展開する企業は基本的にWHYの発想が乏しく、長い目で見ると将来の発展性が乏しいのではないでしょうか。実は、日本ではトヨタ自動車をはじめとした多くの企業はWHYを基に「一貫した企業理念」を持ち続けています。

WHYから生まれる「社会をより良くするものづくりの研究」や、「企業が持つべき社員への責任」「連帯観や共有観」など、アメリカの企業が見習わなければいけない文化が山ほどあると思っています。

谷本:一方で「個」のWHYを考える時、実は、私自身も自著でサイモンさんがおっしゃるWHYに近い概念を打ち出しています。自身の「偏愛」と社会とのインターフェイスを見つける。それがあなたのビジネス・アイデンティティになるという考え方です。

サイモン:普遍のWHYをどのように具現化していくかという点ですよね。例えば任天堂は100年の歴史を持つ企業ですが、普遍的な理念は「顧客に楽しみをもたらすものづくり」であり、その理念を時代に合わせて適応させているだけなのです。

「個」としても同じです。大事なのは、私たちは社会で共同生活をしていく「ソーシャル・アニマル」であるということ。つまり、普遍のWHYを自分の中で咀嚼し、そこから生まれる「社会責任の理念」や「相互に助け合う想いやり」「繊細な気遣い」を持ち、行動し続ける。より良い社会を築いていくことが使命であるということ。それが、WHYが果たす普遍の役割だと思っています。

インタビュー・構成=谷本有香 文=賀陽輝代 イラスト=山崎正夫

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