谷本:働き方の変化はどのようにWHYに影響するのでしょう。これまでの「会社×個人」という関係性から、フリーランスやプロジェクトベースで携わる「複数の企業やコミュニティのプロジェクト×個人」というように、労働環境や社会が多様化しています。そんな流れの中で、WHYはどのように変化していくと思われますか。
サイモン:どんなに時代が変わろうと、人間は「ソーシャル・アニマル」、つまり社会的な生き物であることに変わりありません。ですから一企業への終身雇用やフリーランスに限らず、自分たちが価値観を共有できる「コミュニティ」に所属し、仲間として互いに助け合うことが大切なのです。
さらにいえば、今後、例えばフリーランサーとして働く場合、自身のWHYと価値観を共有できるクライアントを選び、共に遂行するということで、自身の目的や達成感を得やすくなります。そのような選択の仕方が増えていくのではないでしょうか。
谷本:それは、AI時代が来ようと、変わりませんか。
サイモン:様々な社会的な変化が起きようと、なぜ自分が今の仕事に関わっているのか、そこで何を達成したいのかという普遍のWHYの問い掛けですから、AIが出現しようが変わりません。
谷本:では、そのWHYを引き出すため「教育」に必要なことは何だと思いますか。
サイモン:ヒューマン・スキルが大事だと思います。つまり、リーダーシップや傾聴する能力、コミュニケーションや共感する能力。そして、より良い人間になれるかという道徳観を含めての、人間教育。そして、それらの理念もまた、WHYに端を発する自己への問い掛けからくるものだと確信しています。
最後に、何よりまず、自分に問い掛けてみてください。“Who you are”と。そして自身のWHYと向き合い、コミュニケーションがとれているかと。そして、それは「しなければならない」ではなく「したいから」という思いから生まれていますか、と。
それを見つけられた時、あなたの周りにはサポーターが集まるようになるのです。
サイモン・シネック◎リーダーや企業に「人々をインスパイアする方法」を伝授するコンサルタント。これまでアメリカ連邦議会議員、国連、マイクロソフト、アメリカン・エキスプレスなどでWHYの力を伝えてきた。コロンビア大学の戦略的コミュニケーションプログラム のほか、ランド・コーポレーショ ンで非常勤研究員も務める。