テクノロジーはほどほどに? シリコンバレー発、新しい学校のデザイン

Google Code Next Lab (kurani提供)


──クラーニさんがデザインした学びの場は、カラフルで楽しい雰囲気が印象的ですが、ご自身が重要だと考える学びの場のデザインの要素は何ですか。

ほとんどの学校は控えめな配色ですが、いい空間は子どもたちに自信や刺激、安心感、さらには成功する手助けも与えることができます。成功には、喜びを感じることが不可欠です。安心できて快適な空間があってこそ、喜びは生まれます。

例えばデンバーの公立学校に作った教室「ハイテク・コラボラトリー」ではテクノロジーの要素を入れました。見た目もカラフルですが、重要なのはその機能です。空間の目的に合わせて壁で区切るのではなく色や素材を変えて5つのゾーンに分けています。

例えば黄色のゾーンは手作業をするスペースで、簡単に汚れが落ちて耐久性が高い床の素材を使う、などです。また、クイズ番組のセットを真似て、内向的な子どもでも自然と発言できるような仕組みを作っています。さまざまな個性の学び手、つまり子供たちがいるので、それぞれのスタイルを考慮しながら、快適に心から楽しめるような機能を考えています。

私のデザインの特徴は、徹底的にリサーチする点です。依頼を受けた学校を調べ抜いて、事実関係や教育の哲学を深く知った上で学びの場をデザインします。既存のアイデアを当然とせず、依頼主も知らなかった真のニーズを探るのです。



──学びの場をデザインすることはクラーニさんにとってどのような意味がありますか。

建築事務所『kurani』をつくったのは6年前。建築家の知識を使えば、教育格差や住宅クライシスなど現代のさまざまな社会の問題を解決できると思っていました。

教育にフォーカスし始めたのはいくつか理由があります。私は小さい時に両親と一緒にインドから移住しました。移民の家族でしたので、社会に溶け込み、将来いい生活を送るための準備として教育は非常に重要でした。教育は社会的流動性だけでなく、より良い人生を送るために必要です。

同時に、現代の環境や文化的、宗教的な衝突、不寛容や食料や水不足、そういった全ての問題の原点が教育にあると思うのです。もし私たち人類が適切かつ効果的に人々を教育することができれば、そのような問題はそもそも起きなかったのではないでしょうか。

「そんなことはない、素晴らしい教育を受けた人や教育者でもとんでもない犯罪を起こすではないか」と言う人もいます。しかし、私の考える教育と彼らの言う教育は定義が少し違います。私にとって教育とは、科学や歴史を勉強するだけでなく、どうやってより良い人になり、社会に貢献できるかを学ぶこと。「人間開発」なのです。そういった教育こそ、世界のさまざまな問題を一番前向きに解決できる方法だと思います。
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文=成相通子 写真提供=kurani

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