ビジネス

2019.04.26

D2Cの勃興、プロパー消化率の低さ──シタテル河野が考える「アパレル業界の希望と課題」

シタテル代表取締役/CEOの河野秀和

時代の変化に対応できず、有名アパレルブランドが店舗閉鎖に追い込まれるニュースが目立つアパレル業界。その一方で、ここ数年“D2C”という言葉の普及とともに、マイクロインフルエンサーたちが個人でファッションブランドを立ち上げる動きが増えている。

Forbes JAPANが過去に取り上げたブランドでいえば、鈴木えみが立ち上げた「Lautashi(ラウタシー)」がそうだろう。そのほか、アパレル業界の知識はゼロ、衣服づくりの経験もゼロの女性2人が立ち上げた、155cm以下の小柄な女性のためのファッションブランド「COHINA(コヒナ)」といったものもある。

彼女たちに話を聞いたとき、共通して話題にあがったのが「工場探しの難しさ」だ。自分で作りたい衣服のアイデアはあるけど、生産を依頼できる工場がない。知人から工場を紹介してもらっても、そもそも小ロットの生産は受け付けてもらえない──そんな課題に直面するという。

また、工場側も根深い問題を抱えている。ファストファッションに代表される大量生産の衣服づくりは海外の工場に依頼することが多い。国内の工場も優れた技術は持っているにもかかわらず、自ら営業しないため、閑散期が続いてしまっている。

そうした衣服づくりの現場におけるミスマッチに課題を感じ、テクノロジーを活用した解決を図っているスタートアップがシタテルだ。同社は2014年3月に熊本で創業。2015年2月にを衣服つくりたい人と、全国の縫製工場をマッチングする衣服生産プラットフォーム「sitateru(シタテル)」をリリース。現在、連携する工場・サプライヤーは700を突破し、利用するブランドは1万を突破。両者をマッチングしながら、SCS(基幹システム)内で発生するコミュニケーションデータをもとにアパレルに精通した経験豊富なシタテル・コンシェルジュと呼ばれる専属スタッフが、生産プロセス全体をサポートしている。

創業から5年。昨年には新サービス「SPEC(スペック)」発表するなど、勢いを増して成長しているシタテル。彼らは日本のアパレル業界をどう見ているのか。代表の河野秀和に話を伺った。

衣服の嗜好性が細分化。D2Cが盛り上がる時代に変化

──この5年間でアパレル業界には、どのような変化が生じていると思いますか?

端的に感じる変化は、人々が選ぶ衣服の嗜好性が変わってきたということです。1990年代はユニクロのフリースが大ブームとなり、みんながそれを購入していました。その後、2000年代になるとBEAMSやUNITED ARROWSといったセレクトショップが成長していき、彼らがトレンドと言うものを購入した。基本的には“トレンド”というものがあり、みんながそれを追い求めていたんです。

しかし、ここ数年でその前提が大きく変わり、さまざまなレイヤーのブランドが存在し、衣服の種類もたくさんある。その結果、消費者の好みが細分化されていき、衣服がすごく好きな層、全く興味がない層にも属さない、好きでも嫌いでもない人たちが増えました。我々は彼らを「ポイザー」と呼んでいるのですが、彼らが抱えるニーズがどんどん細切れになっているので、マーケット自体も細分化している。

細分化したニーズに対して、どのような衣服を提供するか。我々は生産インフラとして、どう応えていくかが、すごく問われるようになったと思います。

あとは影響力の定義が変わってきましたね。アパレル業界における影響力は、これまでファッションブランドに帰属していましたが、今は小さなメーカーや個人でフォロワーを持つマイクロインフルエンサーが増え、インターネットを通して独自のアイデンティティを発信し、彼ら彼女らが良いと思うものが求められるようになっている。だからこそ、世界中でD2Cブランドが立つ上がっているんだと思います。
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写真=小田駿一

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