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──『あさイチ』では、有働さんの素直な物言いがお茶の間の共感と人気を集めました。

当時も今も心がけているのは、嘘をつかないことです。

「女性が社会でのびのび生きる時代」などと言いながらも、実は社会に対してたくさん嘘をついていると思うんです。本当はやりたいけど、そう言うと生意気だと思われるんじゃないか。自分から手を挙げたいけど、男社会のルールに合わせたほうがいいんじゃないか。そんなふうに本当の気持ちに嘘をつきすぎて、もはや自分でも本心が見えなくなっている人が多いように私は感じます。

だから『あさイチ』のとき、「イラッとすることは、ちゃんと言おう」と決めました。つかなくてもいい嘘に気づいて、きちんと発信すべきだと思ったのです。

とはいえ、それは難しい作業でした。バッシングを受けることもありました。でも、正しいかどうかは別として、誰かが(嘘が見えなくなっている状態を)外さないといけない。周りの感情に流されないこと、そして発信する努力を続けることは、物事を伝える人間として最低限の責任だと思っています。

──有働さんにとって、「来てほしい未来」はどのようなものですか。

まずは、平和であることが大前提。そのうえで、多様な人たちが共に生きる社会が理想です。

ニューヨークで暮らしたとき、初めてマイノリティの立場になりました。その経験は、私には驚きと発見の連続でした。NHKを辞めてから取材で行った、ウガンダの南スーダン難民キャンプもそうでした。私は現地の人たちのルールがわからない。現地の人たちは、日本人に会うのは初めて。「ここで握手すべき?」「笑顔になるべき?」。そんなやりとりが新鮮で、学ぶべきことばかりでした。

「多様な人が集まると、日本の文化が崩れるのでは」。そんな声もありますが、多様な人が集まる社会のほうが、いい意味で空気を読むようになるんです。そして、さまざまなバックグランドを持つ人たちが集まる世の中のほうが、リスクを差し引いても固定観念や常識に囚われすぎずに、のびのびと生きられる人が増えると私は思います。

【前編】怒られてばかりの入局当時──。有働由美子が組織を卒業した理由

有働由美子(うどう・ゆみこ)◎1969年、鹿児島県生まれ。91年にNHKに入局し、ニュース番組やスポーツ番組などを担当。紅白歌合戦の司会も務めた。2007年から3年間、ニューヨーク特派員として米国に勤務。10年に『あさイチ』のキャスターに就任。18年3月にNHKを退局し、同10月から日本テレビ系『news zero』でメインキャスターを務める。

構成=瀬戸久美子 イラストレーション=Kyle Hilton 撮影=ヤン・ブース

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