米フォーブスが2017年からはじめた「THE JUST 100」。2回目を迎えた、この「最も公正さが高い企業ランキング」1位に輝いたマイクロソフトCEOのサティア・ナデラはそう常に自問している。そして、次のように答えるという。
「そうでなければ、問題でしょう」
シアトル郊外レドモンドのマイクロソフト本社から11マイル離れた煤けた工業地区の静まり返った道外れにある倉庫。一見して忘れ去られたように見える小さな建物の中には、20台のサーバーが、一般的な電気コンセントの代わりに、天然ガス発電の燃料電池で動いている。
この実験の最終的な目標は、再生可能な水と熱、わずかな量の二酸化炭素を排出するだけで、データセンターの電気使用量を半減すること。マイクロソフトが今後、20年にわたり、数億ドルを投資して展開するエネルギー分野の野心的なプロジェクトのひとつである。
こうしたマイクロソフトの取り組みは、他人思いのようで必ずしもそうではない。同社における最近の成長を支えているのが、クラウドサービスの「Azure(アジュール)」だからだ。ナデラによれば、アジュールにおける成長の制約要因は、電気を大量に消費する数エーカーにもわたるサーバー群である。
「エネルギー効率化の先頭に立ち、フロントランナーでいることは、わが社にとって、存在に関わる最優先事項です」(ナデラ)
マイクロソフトは、2030年までに、炭素排出量を13年水準から75%削減することを公言している。これは、デトロイトからの全排出量をなくすことに等しい。しかし、こうした経営方針やプロジェクトは、米国環境保護庁が義務付けているから行われているわけではない。あくまで主体的に行っているのだ。
優れた企業は、政府が規制に関心がない公益を含むあらゆる分野において、進んでより良くしようとする傾向が強くなっている。あきらかなのは、こうした企業主導の自己規制は、政治家の発言よりも、社会の意思を反映しているということだ。
企業の未来をつくる7つの「良き指針」
米フォーブスでは、非営利団体ジャスト・キャピタルと共同で「THE JUST 100」を作成している。「従業員の待遇」「顧客対応」「製品品質」「自然環境への配慮」「地域社会との関わり」「雇用創出」「経営及び株主利益還元」という7つの観点から、7万人を超える米国人に、企業に何を期待するか、を調査した。
ランキングに選出された100社の経営陣は、「自らの経済的利益を追求することで、社会の利益にも貢献することになる」という18世紀の経済学者アダム・スミスの『国富論』の格言を実証している。これは数字を見ても、明らかだ。50週間(2018年11月30日時点)における、S&P500種株価指数の3.6%上昇に対し、「THE JUST 100」は7.5%、マイクロソフトに関しては29.9%の上昇となった。つまり、「見えざる手」は倫理に反することは決してないのだ。