彼らにとっての代替資産として、過去10年で最も高い成長株という。そのため相場が330%以上高騰。高値は、希少モデルに限らずあらゆる車種についているという。
2月、国際的規模の見本市が開かれるパリ15区の「ポルト・ドポルト・ド・ヴェルサイユ」で、世界から500以上の名車が集まり、12万人のファンを熱狂させるレトロカーの聖典「サロン・レトロ・モービル」が開催された。
戦前の名車や当時5台しか製造されなかった超希少車種、1939年型のアルファロメオ「8C2900Bツーリング・ベルリネッタ」がオークションにかけられ、1000万ドルの敷居をなんと軽々と越え、1892万ドル(約21億2000万円)で落札された。この青天井ぶりでは、一般コレクターはもはや指をくわえて眺めているしかない。
これまでオークションで1000万ドルの大台を越えたクラシックカーは49モデル。さらに13モデルは2000万ドルを超えている。49モデルのうち、25モデルをフェラーリ社が占め、なかでも高額トップ2の「250GTO」と「250GT」が17モデルに及ぶ。
以下が、今回1000万ドルを超える価格で落札されたクラシックカーの主要なモデルである。
・フェラーリ:250 GT(250GTO含む)、250カリフォルニアスパイダー、250 GT SWB、250 GTツール・ド・フランス
・ブガッティ:タイプ41ロワイヤル、タイプ57SCアトランティック、タイプ55 ロードスター
・メルセデス・ベンツ:W196、スポーツカーバージョンの300SLR
・アストン・マーティン:DBR1、DP215、DB4GTザガート
・ジャガー:タイプD、タイプC
・アルファロメオ:8C」(8C2300モンザ、8C2900Bルンゴ含む)
・フォード:GT40。シェルビーコブラ260
・ポルシェ:917、956
・マクラーレン:F1
・デューセンバーグ:SSJ
高値の一因は「レースでの記録」
これらの車が自動車史のアイコンとして銘記されたことは、レースで華々しい活躍をしたことにも理由がある。例えばブガッティなら1920年代後半に、フェラーリ、アルファロメオは1930年代前半に、それぞれレースでその名を残している。
メルセデスW196は、1950年代に輝かしい成績を残したフォーミュラー1カーだ。1954年、F1デビュー戦で初優勝(ドライバーはファン・マヌエル・ファンジオ)、さらに翌年は6戦出走して5度、優勝している。
このW196のレーシングスポーツカーバージョンである300SLRは、1955年、伝説の公道レース・ミッレミリアで優勝を飾った。ミッレミリアはイタリア全土の公道を1000マイル(1600km)走るレースで、この時ドライバーを務めたスターリング・モスは、副操縦士のデニス・ジェンキンソンと共に平均時速新記録となる時速160 kmを叩きだし、10時間7分48秒でゴールした(2度の給油時間を含む)。
その同じ年、ル・マンで優勝したジャガーが平均速度172kmという記録を出しているが、このレースは、サーキット場を307回周回するレース。対してメルセデス300SLRは、それに迫る記録を公道レースで叩きだしたのだ。