「法人向けVRデバイス」で業績回復狙う台湾HTCの試み

Photo by ADRIA PUIG/Anadolu Agency/Getty Images

台湾のHTCはかつてスマホ市場の主要メーカーだったが、ここ数年はVR(仮想現実)デバイスへの注力を深めている。

HTCは今年2月、PCとの接続が不要なスタンドアローンタイプのVRヘッドセット「Vive Focus Plus VR」を発表し、新たな顧客をVR空間に呼び込もうとしている。HTCの中国支社のプレジデントのWang Graylinは「スタンドアローン型のデバイスで、より自由で快適なVR体験が可能になる」と述べた。

Vive Focus Plus VRの価格は約800ドルで、従来のVive Focusを200ドル上回る。HTCはこの製品の主要ユーザーを法人顧客としており、業務の安全性シミュレーションや医療トレーニングなどでの活用を想定している。

しかし、この製品の売上がHTCの業績回復に貢献する見込みはかなり低い。競合のフェイスブック傘下のオキュラスは新モデルの「Oculus Quest」を399ドルで発売しようとしている。

調査企業Market IntelligenceのPaul Chenは「オキュラスのOculus Questは、HTCのVive Focus Plusとほぼ同等の機能を、割安な価格で実現する」と述べた。

IDCのアジア部門のアナリスト、Kenneth Liewは「スタンドアローン型のVRデバイスはここ数年でVR市場の主要なポジションを占めるようになる。ハイエンドのPCと接続する必要のないスタンドアローンデバイスは、自由なVR体験を可能にする」と述べる。

Liewは、オキュラスの存在感がさほど高くないアジア地域では、HTCのデバイスが好調な売上を記録する可能性もあると予測する。

しかし、英国の調査企業Strategy AnalyticsのNeil Mawstonは、「Vive Focus Plusは価格が高く、想定する市場もニッチであり、売上は一定の水準にとどまる」と指摘している。

「HTCの新モデルは一部の企業には有用なアプリをそろえており、VR空間での会議も可能になる。しかし、現状ではこのようなデバイスへの需要はごくわずかだ。HTCはViveシリーズで、VRの新市場を開拓しようとしているが、目立った成果はあげられていない」とMawstonは続けた。

編集=上田裕資

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