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──北斎展を振り返ってみて、いかがですか。

永田先生がずっとこだわっていたことの一つに、「日本人に北斎を正しく評価してほしい」というものがありました。

先生が30年前にクーリエとしてお手伝いしたパリの北斎展で、フランスの研究者から、「フランス人が北斎のことを一番理解している。なぜなら、日本では北斎の作品が1件も文化財指定されていない」と言われたことが忘れられなかったようです。

小学3年生の頃から北斎に惚れ込んでいる先生にとってこの言葉はショックだった。実際、当時の日本では北斎の作品は一つも文化財指定されていなかったし、評価も低かったため何も言えなかったそうです。

多くを語らなかった先生は、これについて直接口にしたことはありませんでしたが、先生が過去に書かれた文章を読み返すとこのエピソードが何度も出てきました。相当引っかかっていたのだろうと想像ができました。だからこそ、「北斎が日本人から正しく評価される」ことを目指そうとしていたのでしょう。

日本で北斎展を開催すると、みなさん有名な「冨嶽三十六景」探し、その作品の前だけいつも混雑していました。「あの有名な、波と富士山の絵はないのですか?」というお問い合わせもよくいただき、多くの日本人にとって北斎は「冨嶽三十六景を見られれば満足」という認識があったのかもしれません。

しかし、永田先生は「北斎を正しく評価してもらうために、全部を知ってもらいたい」という想いで、ある特定の時期の作品だけピックアップするのではなく、北斎のデビュー作から時系列で展示することにこだわっていました。必ずしも最初から絵がうまかったわけではない北斎が、画号や技法スタイルを変えながら努力を重ねていった変化も見ることができるからです。

もちろん、今回もそれを意識して構成を考えました。

実際に展覧会を終えてみて、どこかの作品の前だけ異常に混雑することなく、一人ひとりが3時間程度かけて楽しんでいたと聞くと、ようやく「波と富士山だけじゃない北斎の魅力」を知っていただけたのかなと思います。

構成=小野瀬わかな イラスト=Luke Waller

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