ビジネス

2019.04.25

失われつつある伝統文化を再解釈し、未来へ引き継ぐ 図案家・川原マリアの挑戦

図案家・川原マリア


──たしかに、ビビッドな色使いやアーガイルのデザインだけでなく、あえて着崩して着るような着物もありますね。狙いはあるのでしょうか?

「MICO PARADE」の着物は、10代から20代前半の女性をターゲットにし絞っています。この業界で働いてもうすぐ10年くらい経ちますが、やはり日本文化は奥深く、一朝一夕で理解できるものではありません。それは裏を返すと「知っていなければダメだ」という固定概念の形成にも繋がり、より一層「日本人の日本文化離れ」が進むのではないかと思っています。

だから私は、多くの方々が伝統文化に触れるきっかけをつくりたい。ハードルを下げ、間口を広げることによってより多くの人が着物に触れる機会を増やしたいと思い、あえてまわりの目を引く派手なデザインで、わかりやすいものをつくるようにしているんです。

「着物を崩して着るなんてけしからん!」とおっしゃる方もいます。けれど、むしろ私は積極的に着崩して、自分のスタイルで着ていただくことを推奨しています。簡単に気軽に着ることができれば、次への興味を持ちやすいし、将来的にはきちんと型を知り、より良質な着物に触れてくれるかもしれない。そういう人が増えていけば、次第に図案家をはじめつくり手も増えて、業界全体が生き返るかもしれない。そんな想いで日々活動しています。

──いまの川原さんをみて、図案家に憧れる若い人たちもいるのではないでしょうか?

幸いなことに、いまSNSを通じてたくさんの熱意ある学生さんたちから「図案家になりたい」とお声掛けいただいています。それはすごく嬉しいこと。ただ、手放しで歓迎し、背中を押してあげられないのも事実です。

というのも、私自身が理不尽なことや、辛い経験をたくさん経験してきているからこそ、彼ら彼女らに同じ思いをさせたくないから。無責任に「おいでよ!」と言えない自分が嫌になることもあります。

だからいまの私がやるべきことは、そういった熱意ある若い方々がきちんと学べる環境をつくっていくこと。先輩方から「図案家が表に出るなんて恥を知れ」とお叱りを受けることもありますが、この素晴らしい伝統を後世に引き継ぐためにも、私がやるべきことはまだまだ山積なのです。

川原マリア

川原マリア◎MICO PARADE 代表取締役社長。京都在住。長崎県出身。着物の図案家として修行を重ね、和の知識を習得した上で、現代的な感覚のもと和に関する書籍・イラストの執筆、和雑貨のデザインやイベントを手掛ける。2014年よりファッション性を取り入れた写真活動を開始。2017年MICO PARADE始動。2018年百貨店出店。2019年ポーラ美術館『モダン美人誕生展』イベント講師他。

文=石原龍太郎 イラスト= Kyle Hilton

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