M・ジョンソンの電撃辞任が証明した「感情を偽ること」のつらさ

ロサンゼルス・レーカーズ元社長、マジック・ジョンソン(Photo by Allen Berezovsky/Getty Images)

米プロバスケットボールNBAのロサンゼルス・レーカーズ社長だったマジック・ジョンソンは先日、上司や組織内の誰にも告げないまま辞任を電撃発表し、スポーツ界を揺るがした。

ジョンソンは、原稿なしで臨んだ記者会見で、レーカーズの社長として自分らしく振る舞えなかったことを嘆き、「また楽しくやれるようにしたい」、「この仕事を始める前の自分に戻りたい」と語った。

またジョンソンは、「罰金やタンパリング(他チームの選手への不正な事前交渉)といったごたごたで、私に支援を求めている若者たちを支援ができないし、ツイートすることもできない。(オクラホマシティ・サンダーの)ラッセル・ウェストブルックは先日素晴らしい偉業を成し遂げたが、『おめでとう』とツイートすることさえできなかった。そうすれば皆からタンパリングだと言われただろう。こんなことは嫌だ。私は自由になりたい」と話した。

ロサンゼルス・レーカーズの社長が感じる重圧や喜びは誰にも分らないが、ほぼ誰もがジョンソンに共感できる重要なポイントがある。それは、仕事で自分らしくなれない、自分の感情を偽らなければならない苦しみだ。

ジョンソンの「この仕事を始める前の自分に戻りたい」という気持ちは、ほとんどの人が一度は感じたことがあるものだ。仕事で自分の感情を偽らなければならならず、本当の自分になれない痛みは現実に存在し、データからも示されている。

私が創業したコンサルティング企業リーダーシップIQ(Leadership IQ)が実施したインターネットアンケート調査「あなたの仕事で求められる心の知能指数(EQ)は高い? 低い?」には5000人以上が回答した。調査で尋ねた質問の一つに、「仕事で適切な感情を示すために、意識的に演技をしたり装ったりする必要がある」という文に対して「常にある」「頻繁にある」「ほぼない」「一度もない」から選ぶものがあった。

結果、回答者の51%が常に、あるいは頻繁に演技をする必要があると答えた。これからは、職場で多くの人が作り笑いをしたり、共感やポジティブさを装ったりすることに多大なエネルギーを費やしていることが分かる。こうした状態が続けば、深刻な疲労が生じ燃え尽き状態になってしまう。
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編集=遠藤宗生

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