だが、昔は昔、今は今だ。外見の華やかさは、もはや多くの米国人女性が望むものではなくなっている。
小売業界に関する独自の分析と情報を提供する米リテール・ダイブに掲載された記事によると、VSブランドの魂、つまりその中核的な位置付けは、「セクシーであること、華やかであること」に尽きる。
VSの親会社Lブランズのレス・ウェクスナー会長は、より多くの女性に商品を支持し、購入してもらうため、カタログ販売の再開を決定。「1つ買えばもう1つ無料」の販売促進プログラムも開始した。
しかし、時代は変わった。消費者はますます、快適さと健康的なライフスタイルを重視するようになっている。セクハラ被害を告発する「#MeToo」運動の広がりや、女性のエンパワーメントが推進されてきたこともある。これらの全てが、VSのセクシーさに対する消費者の態度を変えたのだ。
美人コンテストが否定的に捉えられるようになっていることもあり、米国では長く行われてきたミスコンテスト「ミス・アメリカ」が水着審査を中止。このときには、「#byebyebikini(バイバイ、ビキニ)」のハッシュタグを付けた投稿が相次いだ。
こうしたことも、ウイングを付けたエンジェルとして知られるVSのモデルに対する消費者の考えに影響を与えたかもしれない。
Lブランズの傘下には、VSの他にもバス&ボディワークス、ピンクというブランドと、商品開発から調達、生産、物流までを扱うマスト・グローバルがある。
また、Lブランズは米国のほか、カナダ、英国、中華圏の市場に進出。店舗の多くはショッピング・モールに入居するが、提携企業が運営する650の店舗でも商品を販売している。
同社は向こう複数年における北米事業の拡大計画を立てているというが、今後の成長については疑問が持たれる。下記のとおり、売上高はここ数年にわたってほぼ横ばいであり、利益は減少している。見通しは明るくない。
(年度/売上高/利益)
2018 126億ドル 9億8300万ドル(約1099億円)
2017 126億ドル 11億5800万ドル(約1295億円)
2016 122億ドル 12億5300万ドル(約1401億円)
2015 115億ドル 10億4300万ドル(約1166億円)
2014 108億ドル 9億300万ドル (約1040億円)
どのようなものであれ、同社が今後に向けて打ち出す計画は、VSブランドの位置付けを進化させたものでなくてはならない。もはや「セクシーで魅力的」というレガシーは、成功につながる戦略ではなくなっている。
消費者の関心が快適さやアスレジャー、保守的なスタイルに向かう中、VSの経営陣はデザインもマーケティングにおけるメッセージも、一新する必要がある。