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(撮影=佐伯真二郎)

「これまで食べた昆虫は約360類。他の食べ物と同じように、それぞれの美味しさは全く異なります」

佐伯真二郎は、ネットに食べた昆虫の味や食感を記録している「蟲(むし)ソムリエ」。さらに同好の士を集めて「食用昆虫科学研究会」を設立するなど、「昆虫食」に情熱をかけている。

彼が目指しているのは、「誰もが虫を気軽に食べて健康になれる社会」。これは、決して趣味人の独りよがりな妄想ではない。2013年、国連食糧農業機関(FAO)は、食糧危機を解決するために昆虫類の活用を推奨する報告書を発表している。昆虫食は、人類の未来を救う解決策として注目を集めているのだ。

彼がそこまで昆虫食に惹かれた理由、そして昆虫食が秘めるポテンシャルとは。佐伯に聞いた。

「初めはあくまで知的好奇心でした」

佐伯がはじめて昆虫を口にしたのは2008年。当時、生物学系の大学生として遺伝子研究に取り組んでいた佐伯は、実験で使うショウジョウバエを毎日のように管理していたという。

「当時は虫そのものに強い興味があったわけではなかったのですが、ある時『なぜ自分は虫に食欲が湧かないのか』が気になって。先輩との会話で『一番食べやすい虫は何か』が話題になり、研究室の給湯室昆虫を料理することになったんです」

その時食べたのが、マダガスカルゴキブリ。熱帯地域に生息するゴキブリで、羽はもたず、体長は約8cmと、普段目にするものよりもやや大きい。これカレーの具にしたのだという。

「初めは躊躇したのですが、食べてみると普通に美味しくて。食感はエビのようですが、味は地味でナッツなどに近いと感じました」

その後も定期的に食事会を開催し、少しずつほかの虫も食べるようになっていったという。

「美味しくて夢中になったというよりも、知的好奇心ですね。どんな味なのか、どう調理すれば美味しいのかが気になったんです。はじめて昆虫食に手を出す人は、私のように仲間と一緒にチャレンジすると楽しく食べることができますよ」

その後も、佐伯の好奇心は収まらない。「蟲ソムリエ」として味見をして昆虫料理を開発するサイトをオープン。

「トノサマバッタとクルマバッタの味の違い」「カメムシの香りの違い」など、数多く虫を食べることで見えてくる味の違いを比較し、これまで食べた昆虫は360種、576パターンを味見してそのレビューを記録し続けている(ちなみにカメムシの中には、青リンゴのような良い香りを発する種類もいるという)。

独学で昆虫学を勉強し、その種類や分類法を学んだという。

しかし、そのうち佐伯は一人での活動に限界を感じたという。まずは『楽しい昆虫料理』の著者・内山昭一を訪ね、徐々にネットワークを拡大していった。

「当たり前ですが、一人では地球上の虫を食べきることはできません。昆虫学では一人で3000種程度の虫を分類できればエキスパート。そうした人々の知識を集めることで、学問という体系的な知が完成する。日本には学問ジャンルとしての昆虫食は存在していないので、興味をもつ人に声をかけることにしました」

そうして2011年にできたのが、食用昆虫科学研究会。人文地理学や開発学といった様々な学問で昆虫食に関わっていた人たちが集まる場だ。

文=野口直希

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