──2018年11月、マイクロソフトは、時価総額で世界一の座に返り咲きました。今年1月初旬、米アマゾン・ドット・コムに首位を奪われたとはいえ、昨年は株価も大幅にアップしました。同社の復活をどう分析しますか。
アマゾンとマイクロソフトは、時価総額世界一の座をめぐり、争っている。今現在(1月末)、マイクロソフトは7900億ドルで、アマゾン7830億ドル、米アップル7390億ドルを上回っており、世界一だ(注:2月初旬、アップルが首位を奪還)。
とはいえ、マイクロソフトの復活劇は、他社の株価下落に起因するところが大きい。アップルとアマゾンは昨年、1兆ドル企業になった後、25%近く時価総額が落ち込み、マイクロソフトが首位に立つ余地が生まれた。
マイクロソフトが1兆ドル企業になるには、弊書『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』で挙げた「Tアルゴリズム」(Trillion algorithm=1兆ドル・アルゴリズム)が必要だ。アマゾン、アップル、フェイスブック、グーグルの「4騎士」を成功に導いた、競争力に富む8つの特徴のことである。
まず、「商品の差別化」と「ビジョンへの投資」。そして、「世界展開」と会社の「好感度」。5つ目が、消費者・ユーザー体験を「垂直統合」していること。6つ目が「人工知能(AI)」。次に、その会社での勤務が「キャリアの箔づけになる」こと。そして、一流の人材が集まる「地の利」だ。
しかし、消費者に的を絞っている4騎士と違い、マイクロソフトは企業に照準を合わせている(ため、顧客の感情的な思い入れがない)。老人として生まれ、赤ん坊として死んでいく『ベンジャミン・バトン数奇な人生』(スコット・フィッツジェラルド著)の主人公と違い、新興企業への若返りも不可能だ。
これらを鑑みると、トップであり続けるのは容易でない。アマゾンが世界3番手のメディア企業を目指し、アップルの18年第4四半期10〜12月決算が予想ほど悪くなかった点を考えると、(アマゾンやアップルによる)新たな嵐の気配を感じる。
だが、マイクロソフトの興味深い点は、クラウドや家庭用ゲーム機Xboxなど、製品の多様化と経常利益が見込めることだ。同社は「モノポリー(寡占)」企業ではない。一方、グーグルは米検索市場の91%、アマゾンは米ネット通販市場の50%を占め、アップルは、13億人に上るiOSアプリユーザーのモバイル販売を手中に収めている。
われわれがフェイスブックやアップルに抗議し続けている間に、マイクロソフトは規制当局の監視を遠ざけ、消費者の幻滅とも無縁で、成長を続けている。経常利益(クラウドサービスの「アジュール」や「マイクロソフトオフィス」が主な収入源)は、消費者が同社との長期的関係にお金を投じていることを意味する。大半の企業は、消費者が製品を買う必要に迫られて初めて、消費者との関係を再構築できる。
市場は、消費者と長期的関係を築き、(クラウドなどによる)経常的な売り上げをもたらす企業の価値を高めに評価する。マイクロソフトは、この点が、トップの座を占めるための重要な原動力になることを見いだした。