──シェアリングエコノミーの時代と言われていますが、これから新富町でどんな場づくりをしていきたいですか。
今後のテーマは、世界中から人が集まる「小さな拠点」になること。
例えば米国のポートランドやドイツのフライブルグなど、大都市じゃなくても世界中から訪れる小さな町があります。Airbnbやシェアサイクルなどが増えていくことで、小さな「地方」にもワンクリックで旅行に来られる時代が始まっているのです。
こゆ財団でもAirbnbを始めたのですが、開始直後からインターネットで見つけたという台湾人の方々が、新富町に泊まりに来たんですよ。今まで全く来なかった人たちが訪れるようになり、簡単に世界と繋がれる。スマホひとつで世界と勝負できる時代になりました。
これからは様々なシェアサービスが広がり、時間と場所に縛られないようになることで、地方のチャンスが広がると思います。
最近では「旅×学び」の取り組みも始まっています。イノベーション教育を推進する一般社団法人iclubとANAの取り組みの一貫で、都心部の高校生らを新富町に受け入れ、地元のお茶屋さんを訪れて商品開発をする取り組みをしました。多種多様な人が訪れ、チャレンジでき、多様性を受け入れられる場所でもありたいです。
多様な人材が集まるこゆ財団のメンバーら
──齋藤さんのような「越境イノベーター」に興味があっても、なかなかきっかけがないという人たちにメッセージをお願いします。
かつては地方で「年商1億円を目指す」と言ったら笑われた時代でした。
でもいまや、地方はブルーオーシャン。すでに気づいている人たちは、地方をフィールドに自分の能力を生かして新しい取り組みを始めていますよ。こゆ財団は、挑戦者たちのセーフティネットとなり、失敗しても大丈夫だという状況を生み出しています。
日本では「失敗したらどうするの?」という価値観が根強いですが、成功するには早く失敗をしなければいけません。スタンフォード大学で学んだ「Fail Faster」という考え方です。それが成功への最短距離なのです。発明家エジソンも同じことを言っていますね。
人生ってひとつのボタンの掛け方で変わると思います。こゆ財団のイベントに来たのをきっかけにローカルベンチャースクールに通い、新富町に移住し、カフェのオープンに奮闘する男性もいます。
東京でもいろいろな地方発のイベントがあります。スマホで検索しても情報量が多すぎるので、まずはそんなイベントに行ってみることが重要です。地域との相性もあるんです。好きな地域を選ぶことが大切だと思います。
ありのままの自分で自己実現していく。これからは仲間とともに作り上げる「シェアリングコミュニティ」の時代と言えるでしょう。ぜひ一歩、自分の枠から飛び出してみてください。
齋藤潤一◎こゆ地域づくり推進機構(こゆ財団)代表理事。NPO法人まちづくりGIFT代表理事。1979年大阪府生まれ。シリコンバレーITベンチャーでブランディング・マーケティング責任者などを経験。慶應義塾大学の非常勤講師。