プログラミング教育は「メンター育成」から、鯖江市ではシニアが活躍

「大人のためのプログラミング入門講座」で学ぶ、プログラミング初心者の方々

今、どの地方でも、もちろん東京でも、IT人材が不足していると言われています。

文部科学省は、プログラミング教育を2020年から学校教育の中に組み込むことを必修化しますが、学校教育の現場では、どのようにプログラミングを組みこんでいいかわからないのが実情のようです。そのため、総務省が学校外での学びを加速させるため、地域に学ぶ場を創出する事業を行っています。

私は、総務省の「地域におけるIoTの学び推進事業」に評価委員として参加しており、平成30年度は、プログラミング等のICTに関して世代を超えて知識・経験を共有する仕組み「地域ICTクラブ」を、全国23地域の23団体で展開してきました。この事業の目的は、教える人材(メンター)の育成ですが、地域によっては、子どもたちに教えることに注力し過ぎて、メンター育成ができていないところもあるのが現状です。

まずはシニア世代を対象とした講座を

福井県鯖江市では、「IT」を、もともとあった地場産業「眼鏡・漆器・繊維」に続く第4の産業にするべく、全国に先駆けて、行政と民間企業が一緒になってオープンデータの活用に取り組んできました。しかし、行政が多くのデータを公開しても、そのデータを活用したアプリをつくれる人材がいないと、いつまでたってもせっかくのデータが活用されません。

そのため、2014年に地元のIT企業「jig.jp」の福野泰介社長が、低価格の子ども向けパソコン「IchigoJam」(言語:BASIC)を開発し、ITの担い手を育成するべく、子どもたちがプログラミングを学ぶ機会を設けました。

まずは、私が代表を務めるNPO法人エル・コミュニティが運営するHana道場(ITものづくり拠点)で子どもたちに教えていましたが、行政もその様子を見て、追随します。2015年から、鯖江市は、市内数校の小学校から取り組みをスタートし、2018年4月からは、市内全ての小中学校でプログラミングクラブを実施しています。


Hana道場でプログラミングを学ぶ子どもたち

小中学校では、子ども向けパソコン「IchigoJam」を使用して、プログラミング言語のBASICでゲームをつくったりしています。ただ、先生たちが、BASICでのプログラミングができないため、民間から全校に、講師と講師サポートを派遣しているのが実情です。

例えば、鯖江市内には小学校が12校、中学校が3校、全15校あります。全ての学校のプログラミングクラブをサポートするためには、かなり多くの人材が必要となります。

そこでHana道場では、学校の先生たちをサポートするため、シニア世代を対象とした講師育成講座を開始しました。これは100%民間の事業として受講料をいただいて実施。プログラミング初心者の方を中心に、数カ月間受講してもらった後、学校へとサポートに行ってもらっています。

最初は、平日の昼間に学校に行ける人ということで、受講者をシニアに限定していましたが、「シニアだけですか?」という声もあったため、今年からは「大人のためのプログラミング入門講座」として、門戸を開いて募集。その結果、福井県内外から19名の応募がありました。


「大人のためのプログラミング入門講座」
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文=竹部美樹

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