りゅうちぇる(左)東京レインボープライドの共同代表理事 杉山文野(右)。りゅうちぇるは「東京レインボープライド2019」で、4月29日に代々木公園野外ステージでライブを、4月30日には渋谷MAGNETでトークイベントを予定している。
親の押し付けだとしても、「社会から愛される子」に育てたい
杉山:いま悩んでいるのは、「教育」と「親の都合の押し付け」の違いです。僕は自分が性自認に悩んできたからこそ、子供には自分のやりたいことを自由にやってもらいたいし、それが法律や風習に制限されるべきではないと思っています。こうした願いがあるからこそ、レインボーパレードなどの活動も頑張ることができます。
そんな風に思っていても、様々な場面で無自覚のうちに子どもになんらかの「刷り込み」をしていないか不安になることもあります。例えば、子どもが泣き止んだ時に「いい子だね」と褒めるのは、正しいことなのでしょうか。
大人の都合で、子どもが泣くという自然な行動を邪魔しているのではないか。考え始めると、あらゆる教育を通じて、自分の刷り込みを再生産している気がしてしまって……。
りゅうちぇる:そこまで考えたことはなかったですが、僕はあまりそうは思いません。それが押し付けであってもリンクには社会から愛される人になってほしいと思っています。
僕の両親は、僕のことを誰よりも可愛いと思っていて、芸能人に育てたいと思っていたそうです。だから、小さい頃から誰かにお世話になった時は、両手を顔に寄せた可愛いポーズで「ありがとうございます!」と元気に言うように教えられてきました。
まさに都合のいい押し付けですが、そのおかげで僕はたくさんの人から可愛がられてきたし、自分に自信をもてました。モデルの仕事で撮影してもらう時、自分が一番可愛い角度をすぐに判断できるのも、そのおかげです。
押し付けかもしれませんが、僕は、子どもを可愛がられる存在にするのも大事な親の役目だと思っています。
杉山:たしかに自分の子どもは、社会から愛されてほしい。力強いお言葉に、なんだかヒントをもらえた気がします。
りゅうちぇる:もう一つ大事にしたいのは、きちんとリンクに愛情を伝えることです。
幼い頃は、メイクなどのいわゆる「男の子らしくない趣味」に好意的でなかった両親に、不満をもっていました。けれど、それでも反抗しなかったのは、彼らが僕を愛してくれているとわかっていたから。彼らにはたくさん怒られたけど、それでも他人とは怒り方が全く違っていた。
だから僕も怒る時はその場の感情に流されず、なぜ怒っているのかなるべくきちんと伝えるようにしています。僕もぺこりんも毎日バタバタしていて「ああもう!」と思うことはたくさんありますが、だからこそ毎日の接し方を意識したい。
一般的な「あるべきパパ・ママ像」とはちょっと違うかもしれないけど、それでも自分らしく子どもと接したいし、そういう姿を見せるのも親の役目だと思うんです。
もちろん、僕たちにも正解はわかりません。でも、考えすぎて何もしないくらいなら、失敗しながらでもいろいろ挑戦したい。そこからより良いやり方を探したいんです。
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