クルマの概念を根底から変える「インホイールモーター」の力

インホイールモーター搭載車イメージ(Handout / Gettyimages)

EV(電気自動車)などに使われる、車輪のハブ内部に装備された電気モーターをインホイールモーターと呼ぶ。インホイールモーターの歴史は古く、初めて特許が登録されたのは1884年のことだ。

近年では、日産がインホイールモーターについて言及したり、トヨタがインホイールモーターを採用したコンセプトモデル「Fine-X」を発表しているが、技術的な課題からインホイールモーターが広く普及することはなかった。

こうした状況を変革しようとしているのが、米スタートアップ「Indigo Technologies」だ。同社は、10年間に渡ってステルスモードでインホイールモーターの開発に取り組んできた。

Indigoの設立は2010年だが、初となる製品「Traction T1」をようやくリリースしようとしている。同社によると、T1はただのホイールではなく、「エンジンやデフ、ドライブシャフト、ブレーキライン、ダンパーなど、多くの部品に取って代わるもので、駆動力やアクティブ・サスペンション、パワー、コントロールを組み合わせた制御可能なモジュール」だという。

T1は、パワートレインのパーツを多く組み込んだ小さなユニットで、IndigoのCEO、Brian Hemondは、「実用化が可能な初のインホイールモーターだ」と述べている。

「自動車業界の歴史上、アクチュエータが独立していない、統合されたインホイール・アクティブサスペンション・システムの開発は初めてのことだ。別々の部品を組み合わせるとかさばり、複雑さやコストが増すが、T1はモーターのデザインによって機能を実現した」とHemondは話す。

T1はサスペンションが車両の慣性力を打ち消すことで、車酔いを緩和してくれる。IndigoのCFO、Annie Rosenによると、自動運転車が普及するようになると、このような技術がますます重要になるという。

「我々が開発した統合アクティブ・サスペンションシステムは、車両力学に働きかけることで車酔いを緩和することが可能だ」とRosenは話す。
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編集=上田裕資

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