サステナブルな社会の体現者、米「コブ・ヒル」に学ぶ暮らしのコツ

米バーモントハートランドにあるエコ・ヴィレッジ「コブ・ヒル」の暮らし(c) cobb hill


持続可能な社会を作るために、コブ・ヒルでは何を大切にしているのか。30年以上、持続可能な社会構築について大学で教鞭をとる生態学者であり、複数のエコ・ヴィレッジ型コーハウジングを運営してきたコブ・ヒルの教育プログラムディレクター、コリーン・オコーネル氏に話を聞きました。


コリーン・オコーネル氏、芸術思考学会での来賓講演にて(著者撮影)

まず、「学ぶ力が大切」だとオコーネル氏はいいます。コブ・ヒルでは、すべてコンセンサス(意見の一致)を得て物事を決定します。つまり、自分が住む土地の自然環境や共同体の人々と協調して、より良いコミュニティを築くには、自分の描く理想や役割を考え、納得できるまですり合わせていく必要があります。

「それには、自分自身のこと、相手のこと、さらには自然のことを理解できるように学び続けなければなりません。人の話をよく聞き、率直に意見を述べる。事実を知り、そして何よりも、個々人を、そして自然を尊敬することが大事です」とオコーネル氏は説きます。

コブ・ヒルにおいては、各自が学ぼうとする意思を持たないことには、そこで直面する課題を解決することができません。しかし、人々が忍耐強く少しずつ意識を高めていくことで、確実にコンセンサスを得られるようになるといいます。

「小さなコミュニティだからできることですが、その小さなコミュニティが世界中にできたならば、着実にサステナブルな社会になっていくでしょう」(オコーネル氏)

とはいえ、IPCCが指摘するように、今のような状態では、確実に気候変動のリスクは高まります。気候変動による想像を超えた災害や苛烈な環境のもとで、私たちの子供たちは生きていかねばなりません。そこで生きて行くには、「レジリエンス(外的刺激に対する柔軟性・適応力)」を身につけること何よりも大切だとオコーネル氏は語ります。

コブ・ヒルでは、Resilience.orgが提供するコミュニティアセスメントを実施し、自分たちがどのくらいレジリエントであるかを評価し、どのようにすればレジリエンスを高められるかを検討しています。今はスマートフォンひとつで何でも検索できる時代。しかし、例えば「大きな災害が起きて2週間孤立し、デジタルデバイスが使えない状態」でも、生きていける力が必要ということです。


(c) cobb hill

より「モノを持たない」暮らしを

そんなコブ・ヒルについて、オコーネル氏は「素晴らしい場所だと思うけれど、家が大きすぎると思う」と指摘。「もっと小さなサイズの家であれば、エネルギーも少なくて済む。今からコミュニティを作り直すとしたら、家を小さくします」と話します。

「今、米国ではKonMari(こんまり、日本出身の片付けコンサルタント)メソッドが流行っているけれど、モノを持たないことを私はずっと説いてきました。世界が大きな危機に直面している今、シンプルな生き方がこれからの社会を作っていくのだとアメリカ人は気づいたのでしょう」

自ら学び続け、レジリエンスを身につけ、小さくかつシンプルに生きる。サステナブルな社会を実現するには、コブ・ヒルに学び、これら3つに本気で取り組む必要がありそうです。

連載:「グローバル思考」の伸ばし方
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文=秋山ゆかり

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