ビジネス

2019.04.22

「マニュアル作成」から脱却し、一歩先へ──スタディストが8億円超の資金調達

スタディスト代表取締役 鈴木悟史

高齢者の割合がより一層増加し、労働者人口が減少し続けていく時代。企業が持続的に成長していくためには、いかに社内の人材を効率よく育成し、生産性を向上させられるかが重要になってくる。

従来の育成方法は、文字が羅列された“紙のマニュアル”を使うのは一般的とされていたが、紙だと見づらい上に配布の手間などもかかり、非効率だ。そこに目をつけ、スマホやタブレット端末などで簡単に写真入りのマニュアルを作成できるプラットフォーム「Teachme Biz」を手がけるのがスタディストだ。

同社は4月22日、DNX Venturesおよび既存投資家の日本ベンチャーキャピタル、Salesforce Ventures、三井住友海上キャピタル、三菱UFJキャピタルから総額8.25億円の資金調達を実施したことを明かした。スタディストはこれまでに5.3億円の資金調達を行っており、これで累計調達額は13.6億円となる。

今回調達した資金はマーケティングの強化、海外事業の加速、新規事業への投資に充てる予定だという。

マニュアル作成ツールから、ビジュアルSOPツールへ

スタディストが主力事業「Teachme Biz」を本格的に開始したのは2013年9月のこと。外国人労動者の増加に伴った育成需要の高まりに加え、全国26行の銀行とのアライアンスによって、提供開始から5年半で製造業、小売業、飲食業を中心に2500社以上の企業に導入されるほどの成長を遂げている。

代表の鈴木は「月次収益(MRR)ベースで右肩上がりに成長を遂げていて、売上も対前年比で150%の成長率になっている」と事業の手応えを語る一方で、これまでの「マニュアル作成・共有ツール」という訴求の仕方には課題を感じていたという。

「我々はマーケティングに力を入れることなく、『マニュアル』というキーワードでここまで成長してきました。ただ、サービスを提供していく過程で我々がお客様に提供している価値と、マニュアルというキーワードの意味がズレてきていた」(鈴木)

実際、サービスを導入した企業は作業手順の可視化や、現場浸透を図るための業務基盤として活用することで人材育成時間の大幅削減、社内問い合わせを8割削減するなど、高い経営効果を得ているという。

企業はマニュアルの作成時間の減少や閲覧の効率化といった“ツールとしての単純効果”ではなく、人材育成期間の短縮や離職率の低下といった“経営効果”を求めていたのだ。

「また、シェアを半分占めている製造業、小売業、飲食業では、ISO、HACCP、ハラル認証などに対応するために、正確で、適切な承認プロセスを経た手順の共有や、単なるマニュアルではなく『正しい手順』であることを保証することが要求されるようになってきていて。単純なマニュアルでは企業の経営効果の向上に貢献できなくなっていました」(鈴木)

そのような背景を踏まえ、今回スタディストは「Teachme Biz」を単なる「マニュアル作成・共有ツール」ではなく、画像や動画を用いた「SOP(標準作業手順)」の作成、共有を効率化する「ビジュアルSOPマネジメントプラットフォーム」としてリブランディング。「オペレーションの効率化に欠かせない業務基盤」という訴求を強化していくとのこと。

2020年2月までに大手企業を中心に、新たに1000社以上の導入を目指すという。
次ページ > CMOを採用し、マーケティング活動にも本腰

写真=小田駿一

ForbesBrandVoice

人気記事