奇跡の復活、タイガー・ウッズを支えたナイキの「信じる力」

タイガー・ウッズ(左)とフィル・ナイト(右)(Photo by Nicholas Hunt/Getty Images)

ナイキは1996年からタイガー・ウッズのスポンサーを務めてきた。

ゴルフ界の伝説と呼ばれたウッズは、2009年に不倫スキャンダルが発覚して離婚。その後は腰を痛めて何度も手術し、2017年には鎮痛剤などの影響下で車を運転して逮捕されていた。


(Photo by Lannis Waters-Pool/Getty Images)

しかし、ナイキはそんなウッズを見捨てなかった。4月14日に行われたマスターズ・トーナメントで、ウッズは14年ぶり5度目の大会制覇を果たした。「低迷を乗り越え、優勝できたのは最高の思いだ」と彼は語った。

ナイキの株価は4月18日までの間に4.9%の上昇となり、今年初めに1170億ドルだった同社の時価総額は1402億ドルまで膨らんだ。同社の株式の20%を保有する創業者のフィル・ナイトの資産額は2億5400万ドル増加し、357億ドル(約4兆円)に達した。

1964年にナイキを設立した81歳のナイトは、2016年に経営から退き、彼の息子のトラビス・ナイト(45)が2015年から同社の取締役を務めている。トラビスはアニメーション制作会社「ライカ」のCEOも務めている。

マスターズ優勝でウッズが獲得した賞金は207万ドルで、推定8億ドルの資産を保有する彼にしてみれば、取るに足らない額だろう。しかし、ウッズはこれまでの収入15億ドルのうち、90%以上をスポンサー契約などのエンドースメントから得てきていた。

ウッズの優勝が決まって数分後に、ナイキは彼の快挙を祝福する広告動画を公開した。動画の末尾で幼い頃のウッズは、「いつかジャック・ニクラウスを超える」と述べていた。彼は今回のマスターズ優勝でメジャー通算15勝目をマークし、ニクラウスの最多記録まで3勝に迫った。

「頂点を極め、どん底を見た43歳の男は今も3歳の頃と同じ夢を見ている。これは驚愕すべきことだ」と、ナイキの広告動画にはナレーションが入り、3歳当時のウッズの姿が映し出された。


幼き日のタイガー・ウッズ(Photo by CBS via Getty Images)

ナイキの株価は今年、大きく下落する局面があった。NCAA(全米大学体育協会)男子バスケットボールで2月に行われた試合で、デューク大学のスター選手ザイオン・ウィリアムソンがナイキ製シューズの破損によりヒザを負傷し、株価は急落。ナイキの時価総額は11億ドルも低下していた。

ナイキはタイガー・ウッズにとって最大のスポンサーだが、「タイガー効果」の恩恵を受けた企業は他にもある。ゴルフ用品メーカーのキャロウェイゴルフの株価も2.9%上昇した。また、「タイトリスト」などのゴルフ用品ブランドを手掛ける、アクシネットホールディングスの株価も7.5%の急騰となった。

[訂正]ウッズとニクラウスの優勝記録の表現について、forbes.com原文に誤りがあったため訂正いたしました。

編集=上田裕資

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