断っておくと、この見解自体に客観的な証拠が存在するわけではない。大学生の自立的思考能力が下がっていることを確認できる指標があるわけではなく、これは一部の大学教育関係者が下した主観的な判断だ。結局は、一つ前の世代が若い世代に対して抱く一般的な失望感にすぎないのかもしれない。
一方で、この見解が正しいとした場合、その理由としては多くのものが考えられる。メリーランド大学の研究では、米国人はただ自分が支持する側の人々を擁護し、議論の対象となっている問題については考えない傾向にあることが示されている。
また現在の米政界では、真実を述べたり追求したりすることがあまり重要視されていない。また、陰謀説を広めるユーチューブ動画や、子どもの様子を常に監視する過保護なヘリコプターペアレントの存在もある。
しかし、その他にも一つ考えるべきことがある。それは、学校で数十年にわたり強固に組み込まれ、思考を妨げてきたある要素だ。
米国では「落ちこぼれ防止法(NCLB)」が導入されて以来、学校・学区・教師に責任を負わせる措置として、共通テストが活用されてきた。大きな影響力を持つ共通テストは、公共教育のゆがみにつながった。学校は標準化された数学テストや読解テストで生徒に高い点数を取らせるためリソースを再配分し、テストに出ない音楽や芸術、歴史、さらに休み時間でさえも後回しにするようになった。
試験に大きな影響力を持たせることが、教育にどのような影響をもたらすかについては多くの議論がなされてきたが、テストの性質そのものにも注意を向ける必要がある。テストは多くの場合、内容が標準化された多肢選択式で、ある特定の世界観を助長するものだ。
次の2つの出題文の違いを考えてみよう。
1. この詩を読んで、作者の主なメッセージは何かを答えなさい。作者が伝えようとしていることについて、特定の言葉やイメージが重要な役割を果たしている証拠を示すこと。採点基準は、あなたが自分の考えをいかにうまく説明し、それに対する裏付けを示せるかです。
2. この詩を読んで、次の4つの文のうち、著者の主なメッセージとして正しいものを一つ選びなさい。また、この詩からの4つの引用部分のうち、先ほど選んだ著者の主なメッセージを裏付ける上で最も重要な証拠を選びなさい。正しい答えは一つだけです。