ただ、とても魅力的な食材ながら、非常にアクが強いため処理をするのが大変。かつ、処理後にはすぐ黒くなってしまうということもあり、残念ながら家庭の食卓からは少しずつ消えてしまっているようです。
そんなアーティチョークはどう食べるのか。一般的なのは、レモンと水と塩で丸ごと茹でる、または蒸してから、ビネグレットやマヨネーズなどと一緒に食べる食べ方です。しかしニースでは、シンプルに生でサラダにして食べるのが人気のように思います。
僕も、生のアーティチョークに野生のルッコラ、パルメザンチーズまたはモッツァレラチーズを合わせ、オリーブオイルとレモン汁を絞ってシンプルなサラダにします。塩は使いませんが、野菜の持ってる味だけで十分美味しくいただけます。
また、ニースには「アンショワイヤード」と言われるニース風のバーニャカウダがありますが、アーティチョークはその中にも必ず登場します。そしてもちろん、この街の名物「ニース風サラダ」にも欠かせません。
そのニース風サラダで、アーティチョークはちょっと面白い働きをしてくれます。それは、この野菜に含まれる「シナリン」という成分によるもの。ニース風サラダは、生のそら豆、セロリ、ネギ、生ニンニクなどが入り、本来なら苦味や辛味を感じるものなのですが、シナリンが味蕾の甘味受容体の働きを阻害してくれるので、苦味が緩和され、美味しく食べられるのです。
ちなみに、シナリンとは、ここ最近非常に注目され研究が進められているポリフェノールの一種で、糖尿病の予防や脂質の代謝促進、血中コレステロールや中性脂肪の減少など、多くの薬効が期待されています。肝機能を高める効果もあり、ベトナムなどでは二日酔い予防に煎じて飲まれていたりもします。
地元の農家さんを訪れたとき、「アーティチョークは大きく成長し、綿が詰まってくるとシーズンが終了だ」と教えてくれました。多年草のため毎年出てくるのですが、寒い冬を乗り越えて蕾に栄養素をしっかり貯め、花を咲かせて種になり、まるでタンポポのようにまた飛んでいく。「生命力の強い蕾だから、栄養素が高いのでは」と聞き、納得しました。