ビジネス

2019.04.21

インドの「TikTok禁止」で強まる、中国バイトダンスへの批判

Photo by Chesnot/Getty Images

インド政府は、グーグルとアップルに対し、人気の動画共有アプリ「TikTok」をアプリストアから削除するよう命じた。ポルノなど子供に有害なコンテンツが拡散することを防ぐためだという。

アプリを運営する中国企業「バイトダンス」は、現地の下級裁判所によるアプリの販売停止命令に異議を申し立てていたが、最高裁がそれを退けた。TikTokはインドで2億4000万回以上ダウンロードされており、MAU(月間アクティブユーザー)は1億2000万人に達する。全世界のユーザー数は5億人とされており、インドはバイトダンスにとって非常に重要な市場だ。

バイトダンスは、TikTok以外にも「BuzzVideo」や「Vigo Video」、「Toutiao(今日頭条)」などのアプリを運営している。同社は、TikTokについて「これまでのショート動画アプリとは異なり、ライブ感があってリアルだ」と紹介している。

しかし、裁判所は今回の判断について次のように述べている。「TikTokは文化を劣化させ、ポルノや小児愛など、社会的に非難される不適切なコンテンツの蔓延を助長する」

バングラデシュとインドネシアでも、既にTikTokの利用は禁止されている。バイトダンスに対しては、コンテンツの管理ができていないとして批判が強まっている。

米国政府もバイトダンスを処分

今年2月、バイトダンスが運営するSNSアプリ「Musical.ly」(現在はTikTokと統合)が違法に子供の個人情報を収集していたことが明らかになり、同社は米連邦取引委員会(FTC)に対し、570万ドル(約6.3億円)の和解金を支払うことで合意した。

これは、児童プライバシー保護違反でFTCに支払われる罰金としては過去最高額だ。FTCによると、Musical.lyは児童の位置情報を収集して公開していただけでなく、指摘を受けた後も情報を削除していなかったという。

Musical.ly は、TikTokとの統合時点で米国内で6500万人ものユーザーがいた。「我々は、児童オンラインプライバシー保護法の徹底に真剣に取り組んでおり、法を著しく無視する企業を許容しない」とFTCの当時の会長Joe Simonsは述べていた。

英国では、BBCが次のように報じている。「TikTokは、10代の若者や児童に性的なメッセージを送ったユーザーのアカウントを削除していない。また、児童が投稿したコンテンツの多くに性的な表現が見られ、投稿者の中には9歳の子供がいた」

本件についてバイトダンスにコメントを求めたが、回答を得ることはできなかった。

TikTokの人種差別コンテンツも問題化

英政府は先日、ソーシャルメディアに対して新たな規制を設けると発表した。これにより、SNS企業とその経営陣は、ついにその責任を追及されることになる。フェイスブックやグーグル、ツイッターに加え、バイトダンスも主な規制の対象になることは間違いない。

同社は米国の大手ソーシャルメディア企業のライバルとして急速に存在感を増してきたが、これらの企業と同様、大きな社会的圧力を受けている。同社は最近、ガイドラインに違反したとして、インドで600万もの動画コンテンツを削除している。

このところ、フェイスブックとユーチューブに対する批判は、児童問題よりも人種差別主義の拡散に向けられている。バイトダンスも同様の批判に晒されている。

昨年12月には、Motherboardが次のように報じている。「子供たちの間で人気のTikTok上では、有色人種やユダヤ人に対する暴力を呼び掛けたり、ネオナチのプロパガンダを広めようとするコンテンツが共有されている。TikTokのユーザー数は数億に達し、米国では10代や児童も多く利用している」

今回のインド司法による判断は、新たにTikTokをダウンロードすることを禁ずるもので、既に利用している場合は対象外となる。インドの最高裁は、4月22日に再度審問を開く予定だ。

「我々はインドの司法制度を信頼している。結果については楽観視しており、インドの月間アクティブユーザー1億2000万人に歓迎される内容になるだろう」とバイトダンスは声明の中で述べた。

SNSの運営者がコンテンツの責任を負うことは避けられなくなっている。インドのような市場でもこうした規制が適用され、アプリが禁止されるというのは大きなニュースだ。

TikTokにとってインドは重要な市場であり、今回の判決を覆すことができなければ事業に大きな影響を与えるだろう。さらに、他の国もインドの決定に追随するかもしれない。今回のケースは、バイトダンスにとってはもちろん、ソーシャルメディア業界全体にとって大きな警鐘となる。

編集=上田裕資

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