中国ではオンライン決済の普及に伴い、人々の社会的な信用度をスコア化して数値化する「信用スコア」が一般的な存在となっている。有名な例は、アリババグループが2015年に開始した「芝麻信用(セサミ・クレジット)」がそうだろう。
日本でもみずほ銀行とソフトバンクが立ち上げた合弁会社「J.Score」がスコアリングサービスをリリースしているが、あまり一般的な存在ではない。自分の信用情報がどうなっているか知りたければ、CICやJICCといった信用情報機関にお金を支払い、確認するしかない。
そんな旧態依然とした日本の消費者信用市場に挑むスタートアップが現れた。4月19日、Crezitはジェネシア・ベンチャーズとインキュベイトファンドの2社から、総額7000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。
信用情報、与信の仕組みをもっと柔軟に
Crezitは2019年3月に創業したスタートアップ。創業者の矢部寿明はBASEで金融事業を手がける子会社「BASE BANK」の立ち上げに従事し、即時に資金調達ができる金融サービス「YELL BANK」の開発や融資事業に携わっていた人物だ。
もともとBASEには「将来的な起業」を視野に入れた上で入社していたようで、代表の鶴岡裕太から「そろそろ起業しないの?」と声をかけてもらったことが起業への後押しになったという。数ある選択肢の中、消費者信用市場で事業を展開しようと思った理由は、時代の変化に合わせて、信用情報にまつわる仕組みが何も変わっていなかったからだ。
「消費者信用市場は、消費者向け貸付残高は約10兆円、販売信用残高は約29兆円と大きな産業でありながら、その根幹を担う個人信用情報の仕組みや関連する法制度は固定的で、依レガシーな体制が続いています。テクノロジーによって商流や決済の在り方は加速度的に変化する一方で、その裏側を担う金融や信用とのギャップによって、個人が負う機会損失の総和が増えていく。この問題を解決したいと思ったんです」(矢部)