K-POPはなぜ世界で勝てるのか。BLACKPINKを手がけたプロデューサーが語る


──日本のスタートアップシーンでは、日本の起業家は最初から国内市場を狙い、成功してから海外へ行こうというマインドがまだ強いとよくいわれています。それと同じことが、日本の音楽シーンでも言えるかもしれませんね。

そうですね。韓国ではアーティスト育成も海外進出を前提とした教育を行っています。マネジメント会社では英語教育はもちろん、宗教的な理由でタブーとされているジェスチャーや言葉を、ダンスの振り付けに取り入れてしまったり、SNSで炎上を招く投稿をしないようにしっかりと教育をすることで、世界で戦えるアーティストを育成しています。

少し前まで、人気アイドルグループは日本語版の楽曲も別途で製作していましたが、ストリーミングサービスの普及やファンたちの若年化と共にリテラシーも上がっているため、オリジナル楽曲をそのまま流通させる、つまりわざわざ手間を掛けてローカライズをしないアーティストも増えています。

日本では権利問題が厳しすぎて、色々な動きが制限されてしまう。しかし、ある程度の規模が国内でまかなえてしまうため、そこまで緊迫した課題として認識されていないように感じています。

──東京に進出することで、今後どのようなことをやっていきたいと考えていますか?

日本のクリエイターたちと一緒に、ものづくりをやっていきたいです。私が以前YGで働いていたとき、BLACKPINKの撮影で日本のクリエイターとお仕事をしたことがあります。その時に、現場のカメラマンやスタイリストの仕事ぶりをみて感動しました。

「これでいいや」ではなく、細部へのこだわりや新しい表現、価値を生み出すための熱意がその現場にはありました。世界中のクリエイターと仕事をご一緒しましたが、この点は日本の方々が大変優れていると思います。

一方で、韓国アーティストたちは日々並々ならぬ努力をしています。例えばBLACKPINKのようなダンスパフォーマンスのあるアーティストの場合は、365日、睡眠時間を削ってまでレッスンに明け暮れます。もちろん休みはありません。自分たちをとことん追い込んで努力しているアーティストたちが韓国にはたくさんいます。

私は、この日韓の強み同士をミックスして良いものづくりをしたい。優れたクリエイティブをもつ日本のクリエイターと、ダンスパフォーマンスに優れた韓国のアーティストを掛け合わせることで、より一層ものがつくれるはずです。

今後アジアでは中国、シンガポールと拠点を構える予定ですが、東京はその第一歩として愛されるコンテンツをつくり、発信していきたいと思います。


シン・シティ◎韓国のアーティストプロデューサー、クリエイティブプラットフォーム 「AXIS /エクシス」創業者。09年に 韓国を代表する大手芸能プロダクションYGエンタテインメントに入社し、 クリエイティブ最高責任者・ブランド戦略最高責任者としてBIGBANG、2NE1、WINNER、iKON、BLACKPINK、ONEをプロデュース。 述べ300以上の楽曲、ミュージックビデオ、オンラインプロモーションを手掛けた。BLACKPINKをゼロからつくり上げ、17年6月リリースの"AS IF IT’S YOUR LAST"ミュージックビデオは5億回再生を突破。

ambitious ambition◎韓国新鋭クリエイティブプラットフォーム「AXIS」の第1弾マルチクリエイターボーイズクルー。クルー各自が音楽プロデューサー、DJ、俳優などアーティスト以外の分野もこなし、マルチに飛躍するボーイズクリエイター集団。デビューシングル『black』『golden (feat.LOGAN)』『feeling (feat.Jaxon Kurt)』『Know You Better (feat.NiiHWA)』の4タイトルを4月17日に同時リリース。

文=石原龍太郎 写真=小田駿一

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