世界漫遊の放送作家が教える「旅番組の舞台裏」

パリ2区にある食材店「Le Salon du Chef」にて

パリの中心部、2区にある日本の食文化発信拠点「La Maison du Sake」。その中に「Le Salon du Chef」という、日本食材の専門店が入っている。このお店には、鮑の肝醤油や燻製紅茶など、日本国内でさえなかなか見かけることのない希少な食材や調味料が並んでいる。

そんな食材をパリで誰が使うのか。実はこの店の顧客は、パリのミシュランの星付きレストランのシェフたちなど、感度の高いレストラン関係者が多いのだという。



取材でヨーロッパ各地を旅していると実感するのだが、例えばそこがパリであれワルシャワであれ、「いま、この街で一番おしゃれで人気のレストラン」と言われるところは、往々にして日本やアジアの食材を料理に取り入れている。スターシェフたちは、どうやら他のシェフが使わない食材を使いたがる傾向が強いようだ。

そんなスターシェフたちの嗜好に着目して、「Le Salon du Chef」を立ち上げた人物が、パソナ農援隊の田中康輔さんだ。パソナ農援隊は、人材サービス大手のパソナグループ内の一企業で、日本の「農業」を「応援」するという目的で設立された。現在、田中さんは、このパソナ農援隊の代表を務めている。

1999年にパソナグループに入社した田中さん。新入社員時代は、観光系の事業に携わっていたというが、2011年12月にパソナ農援隊が設立されると同時に、農業系の事業創出による地方創生に取り組み始めた。一般的に地方創生というと、すぐに観光に結びつけがちであるが、もともと食べることが大好きだったという田中さんは、「農業×食×観光」というコンセプトで、地方創生に取り組むことにした。



僕の中では、農業といえば、実家が農家の人々によって引き継がれるものというイメージがある。しかし田中さんによると、そんな農業に対するひと昔前の考え方が、近年、随分変わってきたそうだ。農業を、自分らしさを追求するための選択肢のひとつと考える若者が増えてきたのだという。そのせいか、最近は実家が農家ではない若者が、農家になるというパターンも多いそうだ。

しかし、新規に就農した人たちは開業早々、様々な問題に直面することになる。農地や農業用機械の取得にかかる費用の工面はもちろん、生産した野菜の販路確保も簡単なことではない。

そんな彼らのサポートや育成を行なっていくのが、パソナ農援隊なのだ。新規就農者の募集から育成、どんな野菜をつくり、どのように売るかといった販売支援をはじめ、既に農家として活動している人に対しても経営研修を行っているという。

なぜまず「パリ」なのか

このように、日本各地で農業支援活動をしているパソナ農援隊。そんな彼らがなぜ、パリに拠点を構えることにしたのだろうか。

「日本の地方に行くと、そこには職人の方々によって手間をかけて丁寧につくられた素晴らしい農産物や加工品がたくさんあります。でも、全国的にはあまり知られていないものがほとんど。そのような良いものつくる人たちは、なかなか情報発信にまでは手が届きません。だから、彼らがつくる、本当に良いものにスポットライトを当てたいと思ったんです」

文=鍵和田昇

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