世界38カ国、800万人が愛読する経済誌の日本版


佐渡島:オリジナリティーの話に戻しますが、コミックでも小説でもひとつの作品があって、それが商品になるかどうかという点では、「ある一定のゲージ」を充たしていなければいけないんですが、そのゲージって「型」なんですよね。でも、「褒められるところ」、つまりオリジナリティーは型の外にあったりする。持ち込まれた作品を「面白いね」と褒めながらも、「これで食べて行きたいんだったら、この型は越えよう」って伝えないといけないんです。

吉田:佐渡島さんが作家さんと向き合っているときは、「何でも面白がってその人をほめて引き出す」のと、「価値が成立するための土台としての型を超えさせる」という、2つの「回路」を使い分けながら、いつも接しているわけですね。

佐渡島:そういうことになります。

吉田:その2つを、ひっくり返したり、混ぜ返したりしがちな人が苦しんでいる。例えば、情熱とかやる気はすごくあって、「偏愛」が独走しているような人がいる。「僕はこんなに好きなのに、上司はわかってくれない」なんて言っているような人ですね。

「オリジナリティーのある仕組み」をつくる

吉田:広告業界でもよくいるこういう人が、「この企画は絶対面白い、こんな突拍子もないもの世の中で見たことないじゃないですか?」と言っても、上司は「う〜ん、ひとりの人間としては面白いと思うんだけど」とディレクションする側もそこを混ぜ返したりしてしまう。

佐渡島:企画って抽象度が高いから「型」を守らない人が多いのです。例えば、「どこにあるかわからないレストランで、毎日ステルスでオープンする」なんて言っても、誰も来られないじゃないですか?これはさすがにダメだって誰もが気づきますが、実はこんな突拍子もないアイディアでも、企画ということなら、皆、平気で言っているのです。

抽象度が高い企画というものであっても、レストランと同じく、絶対に充たさないといけない型がいくつかあって、それを踏まえたクリエイティビティーで、面白いものをつくらないといけないのです。それなのに、そこを分けて考えられていないことが往々とある。

吉田:「オリジナリティは、仕組みからしか生まれない」とも言えますね。天才と言われる人間に何かが降臨して急にアイデアが閃いた、なんてこともないとは言えないのかもしれませんが、それはその瞬間だけ見ればそうかもしれないけれど、その前に地道な習慣があったり、仕組みだったり、考え方の型があったりする。そんな土台ができたうえで、どういうスイングをするかが大事なんですよね。



佐渡島:人生の正解が2回ほどでよかったら、パッとした閃きでいけますが、年に何回かそのレベルのものをやろうとしたら「仕組み」が必要ですね。

吉田:サーフィンが好きな友人の言葉なんですけど、「人はポセイドンじゃないから波は起こせないじゃん。でも、いい波が来るってことに、気づきやすくなることはできる」って。

友達のネットワークとか情報網をつくって、「どこどこの、どのシーズンに、こんな波が来る」ってのは知ることができたり、もしくは、定点カメラを設置して、ITを駆使して、こんな海が凪いだ翌日は大きな波が来ると分析したりとか。ポセイドンにはなれないけど。ポセイドンが起こした良い波をどうやって自分の波乗り人生とマッチングさせるか、その確率を最大化する。

僕の本は、結構、彼の言葉から着想を得ていて、自分で必死に波を起こそうとしたり、「こんな波が来たらこう乗るぜ」ってイメージしたりはするんだけど、いい波と出合う方法を全く考えていなかったりしている人に向けて、ヒントを届けたかったんです。

オリジナリティーと仕組みの関係って、波を起こすって行為と、波に気づくという行為と、波が来たときにちゃんと乗れるか、という3つの変数の話なんです。

佐渡島:それは、すごくわかりやすいですね。

吉田:「人生は運ゲー(スキルよりも運の要素が強いゲームのこと)だ」ってなっちゃうと、成功が「2回」で終わっちゃいますもんね。閃き待ち人生なんて恐ろしいです。


吉田将英氏の近著『仕事と人生がうまく回り出すアンテナ力』(三笠書房)が発売中

佐渡島庸平◎株式会社コルク代表取締役会長。2002年に講談社に入社し、週刊モーニング編集部に所属。『バガボンド』(井上雄彦)、『ドラゴン桜』(三田紀房)、『働きマン』(安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)、『モダンタイムス』(伊坂幸太郎)、『16歳の教科書』などの編集を担当する。2012年に講談社を退社し、作家のエージェント会社、コルクを設立。

吉田将英◎1985年生まれ。前職広告代理店にてクライアント企業のブランド戦略立案に従事した後、2012年電通入社。電通ビジネスデザインスクエアでは経営者のパートナーとして、企業の未来創造にまつわるプロジェクトを多数手がける。また、電通若者研究部のメンバーとして、10~20代の若年層の心理・動向分析とそれに基づくコンサルティング/プランニングに従事。著作に『仕事と人生がうまく回り出すアンテナ力』(三笠書房)、『若者離れ』(エムディエヌコーポレーション)、『なぜ君たちは就活になるとみんな同じようなことばかりしゃべりだすのか』(宣伝会議)。

取材・文=松浦朋希 写真=藤井さおり

PICK UP

あなたにおすすめ

合わせて読みたい