世界38カ国、800万人が愛読する経済誌の日本版


オリジナリティーはパターンとか「癖」にある

佐渡島:吉田さんは、そもそも、オリジナリティーはどうしたら獲得できると思いますか?

吉田:それに到達するには、2つの道があると思います。1つは「他の人と違う、全く新しいものを目指す」という道。もう1つは、「他の人と同じだが、人より深く掘っていく」という道。1つ目の道を進もうとするのはなかなかしんどい。なぜなら、差別化なんてキリがないし、情報って取りにいけばいくほど均質化していくから。結局、皆が見ているものにアクセスしていくだけになってしまうのです。

昔、僕がビジネス書を読み漁っていたときがそうでした。人より努力して、人より本を読んで、オリジナルな自分にならないといけないと思い込んでいました。でも、情報に際限なんてないし、「全員と違う俺」なんていない。それで到達した結論が、「偏愛」でいいんだな、偏っていいんだなというものでした。つまり、人より深く掘っていくということなのです。



佐渡島:その通りだと思います。音楽において、限られた音符の中から無限の組み合わせが生まれるように、アイディアも組み合わせです。その組み合わせの中にオリジナリティーが生まれる。どんなふうに組み合わせるのか、そのパターンとか「癖」のところにオリジナリティーがある。

料理でも同じです。質の差こそあれ、よほど奇を衒わない限りほとんど素材は同じ。料理には、炒める、揚げる、焼く、蒸す、煮るという5つ以外の調理法は存在しません。この中から1つしか使わない手もありますし、組み合わせてもいい。

自分が携わっている「物語」というジャンルにおいても、一見、バリエーションに満ちているように見えますが、そのパターンは6つ程度しかない。多くの人に読まれている小説をコンピューターでプログラミング解析した『ベストセラーコード』(副題は「『売れる文章』を見きわめる驚異のアルゴリズム」、ジョディ・アーチャー&マシュー・ジョッカーズ著)という本でも、それは明らかにされています。

情報を集めることに時間をかけてはダメ

吉田:佐渡島さんの話の「パターンは決まっている」というところだけ、何も考えることなく聞いてしまうと、「じゃあ、オリジナリティーって出しにくいって話ですか?」と捉える人が出てくるかもしれませんね。

佐渡島:そうですね。少し説明が必要かもしれませんね。大事なのは、「クリエイティビティが生まれるタイミングをどう捉えるか」という点なのです。多くの人は、それは「初期」だと思っていますが、実は「最後」なんですよ。

例えば、コンサルの持っているフレームワークって素晴らしくて、その枠をつくった人がまずは凄いんです。でも、なんのためにフレームワークがあるかというと、「最も早く基礎的な分析をするため」、その1点だけなんです。

「データが石油(資源)だ」と言っているだけでは足りなくて、データを整えて分析し、そこからどんな戦略を練るか、というところに、未来は待っているのです。データだけでは完結しない、「そこに何を足すのか」が大事なんです。

吉田:クリエイターが、たまに「コンサルなんて仕組みだけだ」なんて揶揄をすることがあるんですけど、要は「やりよう」だということですね。

佐渡島:会社でもフレームワークをやりきることに満足している人がたくさんいます。一方でフレームワークをまったく使っていない人が、安定的にフレームワークを利用している人を超えるのは難しい。

今、世の中の経営企画のフレームワークのほとんどはマッキンゼー、マーケティングはP&G、営業はリクルートのフレームワークが使われています。フレームワークを開発した人って、この3社の中心人物の各1人から2人、多くて計6人程度です。細かいアップデートはされていますが、「アップグレード」はされていない。そのせいもあって、状況によってはフレームワークだけでは「歯が立たない」ときがある。

取材・文=松浦朋希 写真=藤井さおり

PICK UP

あなたにおすすめ

合わせて読みたい