等身大ヒーローの決定版 「シャザム!」は大人が観ても楽しめる

映画「シャザム!」(c)2019 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

つねづね不思議に思っていたのが、アメリカのスーパーヒーローは「人間」のかたちをしているが、日本のそれは、巨大なロボットだったり、大きく変身する宇宙人だったりする。スーパーマンにしても、バットマンにしても、人間が人間のサイズで超人的な力を発揮するのだが、ガンダムもウルトラマンもその活躍する姿は人間より遥かに大きい。

アメリカという国が等身大のスーパーヒーローを求めているのに対して、日本の場合は自分たちとはまったく姿形の異なるヒーローが現れる。フロンティア精神で発展してきたアメリカという国が、常にヒーローたちを身近なものとして、自分たちに重ね合わせてきた結果が、この違いを生んだのだと筆者は踏んでいるのだが、その等身大スーパーヒーローの決定版ともいうべき映画が日米で公開された。

変身するための言葉を唱えると、少年から筋肉隆々の大人へ、まるでスーパーマンのような出で立ちで(実際、1940年代にコミックとして登場したときは「スーパーマンの盗作」として訴えられた)、超人的な力を発揮するスーパーヒーローの映画「シャザム!」だ。

超人の能力開発シーンが面白い

主人公は、3歳のときに実の母と生き別れとなった孤児の少年ビリー・バットソン。彼は映画「ロッキー」の舞台でもあったアメリカのフィラデルフィアに住んでいるが、すでに6回、里親の元を逃げ出していた。



新たに里親となったのは、すでに5人の子供を養子にしているバスケス夫妻。そこでも新しい家族に馴染めないビリーは、ある日、地下鉄に乗っているときに、突然、異世界へと連れ出される。

「ロック・オブ・エタニティ(永遠の岩)」という場所で、ひとりの魔術師と出会ったビリーは、彼から「シャザム!」と唱えろと命じられる。すると、少年だったビリーの姿は、たちまちマントを翻した大人の姿となる。何が起きたのか自分でもわからないまま、そのままの姿で家にたどり着いた彼は、同じく養子であるフレディに自分がビリーであることを打ち明ける。

一緒の部屋に住むフレディには身体に障害があり、いつも松葉杖をついているが、実はとびきりのスーパーヒーロー・オタク。フレディはビリーの変身した姿を見て、すぐに事を理解し、彼と一緒にその超人であるかもしれない能力を試すのだった。



「見た目はオトナ! 中身はコドモ!」という惹句が、この映画では使われているが、まさにこのスーパーヒーロー見習いのビリーが、スーパーヒーロー・オタクのフレディとともに、その能力を少しずつ「開発」していくシーンが面白い。

コンビニエンスストアに入った彼らは、そこで強盗と遭遇するのだが、拳銃から放たれた弾丸をビリーはいとも簡単に弾いてしまう。発揮するパワーも強大で、強盗たちを一撃で店の外へと吹き飛ばしてしまう。手からは電気を放ち、道行く人の携帯を充電してしまう。

子供の頃に、こんなことができたら……と夢想するものだが、それを彼らは片っ端から実現していくのである。まさに、等身大ヒーロー誕生の現場を観ているようで、この場面は楽しく、この作品の見どころでもある。
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文=稲垣伸寿

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