アメリカという国が等身大のスーパーヒーローを求めているのに対して、日本の場合は自分たちとはまったく姿形の異なるヒーローが現れる。フロンティア精神で発展してきたアメリカという国が、常にヒーローたちを身近なものとして、自分たちに重ね合わせてきた結果が、この違いを生んだのだと筆者は踏んでいるのだが、その等身大スーパーヒーローの決定版ともいうべき映画が日米で公開された。
変身するための言葉を唱えると、少年から筋肉隆々の大人へ、まるでスーパーマンのような出で立ちで(実際、1940年代にコミックとして登場したときは「スーパーマンの盗作」として訴えられた)、超人的な力を発揮するスーパーヒーローの映画「シャザム!」だ。
超人の能力開発シーンが面白い
主人公は、3歳のときに実の母と生き別れとなった孤児の少年ビリー・バットソン。彼は映画「ロッキー」の舞台でもあったアメリカのフィラデルフィアに住んでいるが、すでに6回、里親の元を逃げ出していた。
新たに里親となったのは、すでに5人の子供を養子にしているバスケス夫妻。そこでも新しい家族に馴染めないビリーは、ある日、地下鉄に乗っているときに、突然、異世界へと連れ出される。
「ロック・オブ・エタニティ(永遠の岩)」という場所で、ひとりの魔術師と出会ったビリーは、彼から「シャザム!」と唱えろと命じられる。すると、少年だったビリーの姿は、たちまちマントを翻した大人の姿となる。何が起きたのか自分でもわからないまま、そのままの姿で家にたどり着いた彼は、同じく養子であるフレディに自分がビリーであることを打ち明ける。
一緒の部屋に住むフレディには身体に障害があり、いつも松葉杖をついているが、実はとびきりのスーパーヒーロー・オタク。フレディはビリーの変身した姿を見て、すぐに事を理解し、彼と一緒にその超人であるかもしれない能力を試すのだった。
「見た目はオトナ! 中身はコドモ!」という惹句が、この映画では使われているが、まさにこのスーパーヒーロー見習いのビリーが、スーパーヒーロー・オタクのフレディとともに、その能力を少しずつ「開発」していくシーンが面白い。
コンビニエンスストアに入った彼らは、そこで強盗と遭遇するのだが、拳銃から放たれた弾丸をビリーはいとも簡単に弾いてしまう。発揮するパワーも強大で、強盗たちを一撃で店の外へと吹き飛ばしてしまう。手からは電気を放ち、道行く人の携帯を充電してしまう。
子供の頃に、こんなことができたら……と夢想するものだが、それを彼らは片っ端から実現していくのである。まさに、等身大ヒーロー誕生の現場を観ているようで、この場面は楽しく、この作品の見どころでもある。