しかし、今回、神戸市は学生の新たな派遣先としてアフリカのルワンダ共和国を選んだ。この国は、1994年の大虐殺(ジェノサイド)で、国民の約1割に当たる80〜100万人が犠牲になったと言われているが、それから四半世紀、汚職や治安への政策が功を奏し、「アフリカの奇跡」とも呼ばれる経済成長を続けている。
近年、神戸市はルワンダとICT分野での経済交流を続けてきたが、このほど、全国から募集した18人の学生たちをこの国へと送り出した。アフリカの大地と人々が、またルワンダという経済発展著しい国が、日本から訪れた彼らや彼女たちに何を与えたのか紹介しよう。
2月17日、ルワンダのキガリ国際空港に到着した若者たち。彼ら一人ひとりと話をすると、前から漠然とアフリカに関心を持っており、いつかは訪問したいと機会を探っていたという人間が多い。ルワンダのことは知らなかったが、自治体主催という安心感もあり、SNSなどでこの企画を知って、飛びついたとも言う。
若者たちは、現地で2週間、テーマを決めてチームを組み、ルワンダが抱える課題の探索と具体的施策に挑んだ。また、最終日には、ルワンダ政府のICT・イノベーション省の事務次官らにそれらの成果を発表する機会も用意されるなど、刺激に満ちたプログラムを経験した。
中学校でペットボトルのロケットを飛ばす
昨年10月、NASAが提供するデータを活用したハッカソンで優勝した新原有紗(関西学院大学総合政策学部)は、このツアーに参加するにあたって、「宇宙」というアフリカらしくないテーマを選んだ。ICT分野への投資が盛んなルワンダでは、地上の通信網やセンサーに人工衛星を組み合わせた地上監視が拡大していくとひらめいたからだ。
ところが、渡航前、ルワンダの留学生が参加する研修や雑誌記事の情報から、ルワンダでは人工衛星やロケットなどの宇宙の活用を、「先進国の娯楽」だと断じる国民がいることを知った。そこで、ルワンダの国民全体が宇宙の活用を身近に感じ、将来の技術者育成につながる教育活動をしたいと考えた。
新原らのチームは、首都キガリ近郊のカガラマ中学校で、ペットボトルでロケットを製作し、空高く飛ばす教室を実施した。彼女ら自身が驚いたのは、この準備に要したのはわずか1日。前日に、ルワンダの商工会議所の幹部に相談すると、目の前で知り合いの校長に電話をかけ、翌日この学校に行くように言われたという。
日本でこのような教室をするとなると、何週間も前から学校や教育委員会に調整をしなければならない。それゆえ、日本では実施するという発想すら生まれない。30歳以下が75%を占めるこの国の「若さ」が、このスピードと行動力として反映されているのではないかと思ったという。
新原は、生徒たちの宇宙への関心の高さにも驚愕した。生徒だけではない、物理の先生がロケットの飛ぶ原理を、突然、生徒に説明し始めた。それもそのはず、この翌日に英国のスタートアップ企業が、ルワンダを含めた世界6カ国の農村の学校にネット接続を行うための人工衛星を打ち上げる、と現地のマスコミが連日報じていたのだ。