キャリア・教育

2019.04.22 07:30

「アフリカの奇跡」の国、ルワンダが日本の若者に与えたもの

ルワンダICT・イノベーション省事務次官から助言を受ける成果発表会


実は、日本もこの分野では一翼を担っている。今年の夏にルワンダ政府が初めて打ち上げる人工衛星は、日本企業と東京大学が開発した。国土の土壌水分量を宇宙から監視し、干ばつ対策に生かしたいという目的からだ。
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東京大学航空宇宙工学専攻の中須賀真一教授は、「道路などの地上インフラが未整備なルワンダは、日本のような先進国より衛星活用のメリットが大きい」と話す。中須賀教授は、この国の宇宙へのリテラシーを高めようと、学生向けの衛星づくりのサポートも提案したという。新原らの活動は、見事にルワンダの課題に刺さっていたのだ。

達成できたことも、できなかったことも

保坂遥介(横浜国立大学理工学部)と西尾育海(神戸市外国語大学)の2人は、野菜や果物の仲介や運送コストを下げるビジネスに注目した。彼らは、真っ赤に日焼けし、緑の調理用バナナ25kgを担いで、キガリの中心部にある活動拠点まで運んだ。ルワンダ語の通訳を雇い、農村でバナナ農家と交渉し、やっとのことで現地価格でバナナを買えたと喜んだ。
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買ってきたバナナをホテルに持ち込むと、仕入れ値の倍以上で売れた。しかも、生産者が誰に販売して、ホテルが誰から購入するという流通経路も判明した。

保坂は、「大学や部活という看板がないと、自分が何者であるかが説明できなかった。また、当事者意識を持って現地での交渉に挑まなければ、失礼となり、相手も真実を語らない。苦しい経験だった」と帰国してから振り返った。

悔しさを日本に持ち帰った者もいる。卓球選手であり、卓球をこよなく愛する小畑勇斗(阪南大学流通学部)は、日本の温泉旅館やアメリカのコワーキングスペースに置かれた卓球台が人々のコミュニケーションを活発にしているのをヒントに、ルワンダで卓球カフェやバーができないかと考えた。しかし、現地で手は尽くしたが、話が進むことはなかった。

「熱い思い」に素直に反応する国

総じて、今回の参加者は皆、心に「熱い思い」を秘めていた。日本では、前例や慣習、そして周囲の目に束縛され、行動はおろか、発想にすらつながらなかったが、ひとたびルワンダの大地に立つと、思いを「形」にしようと果敢に行動した。そして、若く、成長を続けるこの国も、彼らの行動に素直に反応した。

スタートアップビジネスは、これまで誰も考えなかった発想と、それを検証する行動から生み出される。ルワンダという国は、それがシンプルに率直に行える国なのだと感じたという。

今月5日、参加者の代表4名が神戸市役所を訪問して、3年前にルワンダを訪れて同国との交流をスタートさせた久元喜造市長に現地での体験を報告した。


神戸市の久元喜造市長(左から2人目)に報告した新原有紗(同3人目)と西尾育海(右端)

ルワンダでの熱い思いから、社会のニーズを感得し、実現する方法を学んだ彼らが、次は世界を相手に、どのようなプランを実現させていくのか楽しみでならない。

連載:地方発イノベーションの秘訣
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文=多名部重則

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