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国境は知っている! 〜ボーダーツーリストが見た北東アジアのリアル


まず成田から中国黒龍江省の省都ハルビンまで、LCCのスプリングジャパンが週4便運航しており、フライト時間は2時間55分。さらに、ハルビンから綏芬河までは、昨年冬から高速鉄道が開通しており、所要は2時間半。この成田〜ハルビン線は朝便なので、日本を出たその日の午後にはロシア国境の町、綏芬河に着く。


1901年の東清鉄道開設時のデザインに似せて改装されたハルビン駅(中国黒龍江省)。戦前の日本が誇った満鉄の「あじあ号」の3倍近いスピードによって移動時間の短縮も実現している。

ロシア行き国際列車は午前発なので、ここで1泊しなければならないが、鉄道チケットは駅で購入できる。中国入国にはビザ取得は必要ないので、綏芬河のホテル1泊の予約手配と電子簡易ビザの申請のみ済ませておけばいい。

日清戦争後、帝政ロシアが建設した東清鉄道は、北東アジアの近代史に大きく名を残しているが、内蒙古自治州のロシア国境の町、満洲里からハルビンを経由し、綏芬河に至る約1500kmのうち、全長の3分の2近くにあたる綏芬河〜チチハル間は、すでに高速鉄道化されている。


ロシア国境の町、綏芬河の旧駅舎に到着したロシア人ツーリスト(2014年当時)

待たれる州跨ぎOKのルール

ところで、ウラジオストクを訪れる日本人が増えたことから、ハバロフスク地方やアムール州、サハリン州、カムチャツカ地方など、極東ロシアの残りの地方でも、昨年9月1日から一斉に電子簡易ビザの発給が開始された。

今年の6月1日からは、ハバロフスクからシベリア横断鉄道に乗って西に向かった先のザバイカリエ地方のチタや、透明度の高さで知られる風光明媚なバイカル湖にも近く、モンゴル系住民が多く暮らすブヤート共和国のウラン・ウデの空港でも開始する予定という。

これらの地方では、発給は空路のみが対象だが、これまでそれほど知られていなかったロシアのシベリア方面への渡航が簡単になりつつある(但し、サハリンのみ、空路に加え、稚内から出航しているフェリーでの入国も対象。海路で入国した場合は空路での出国は不可)。

極東ロシアを代表する都市を自認するハバロフスクでは、ウラジオストクはライバル関係にあることから、「遅れをとってはいられない。どうしたらハバロフスクにも日本人を呼び込むことができるのか」と現地の関係者が気にかけている。

昨夏のFIFAワールドカップ開催中、ロシアを訪れた日本のサポーターから同国のイメージが大きく変わったという声がよく聞かれた。こうした評判に気をよくして、これまでの閉鎖的なイメージを転換し、旅行者に門戸を開く方向に舵を切っていることがわかる。極東ロシアの電子簡易ビザ発給ラッシュの背景には、こうしたロシア側の期待があるのだ。


北東アジアの地図を逆さにすると、あらためてその近さに気づくなど、発見がある

だが、この施策にはひとつ難点がある。入国後、現状では空路や陸路の移動で隣の州に行けないのがルールなのだ。これでは、シベリア鉄道をプチ体験するには、従来どおり、ロシア連邦大使館に申請して通常の観光ビザを取得しなければならない。

現地関係者の話では、ロシア側もそれを承知していて、「現在、法改正準備中」と聞く。この際、州跨ぎOKのルール改訂もそうだが、ロシア全土で電子簡易ビザが発給される日が来ることを心待ちにしたい。

連載 : ボーダーツーリストが見た 北東アジアのリアル
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文=中村正人 写真=佐藤憲一

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