思い立って、香川県へ
その気づきが、今の事業につながった。とはいえ、当時の長谷川はラーメンがただただ好きなだけで、自分で本格的なラーメンが作れた訳ではなかった。「ラーメンの事業を始めるのであれば、まずは自分で作れなければ何も始まらない」そう考えた長谷川は、サンフランシスコから日本にすぐさま一時帰国。香川県にあるラーメンの専門学校に通い、ラーメンの作り方を基礎から徹底的に勉強した。
その後、サンフランシスコに戻り、マーケットリサーチを開始。ラーメンの試食会を開催したり、オフィス向けのケータリングを行ったり、時にはホームパーティでラーメンシェフをしながら、現地の人たちが喜び、受け入れてくれるラーメンについて理解を深めていった。
「日本の人たちではなく、現地の人たちに『美味しい』と言ってもらえなければ、事業が成り立たない。ひたすらテストを繰り返していきながら、チューニングを重ね、完成度を高めていきました」
そうして「今まで食べた中で一番美味しい!」という反応を得られるようになってきたため、より真剣に事業化を考え始めた。、ラーメンをどうビジネスにするのか。実店舗をオープンする、フードトラックでラーメンを提供するなど、さまざまな選択肢があった。出来る限り大勢の人が、美味しいラーメンを気軽に食べられるようにする方法を考えた末に、辿り着いたアイデアが「ラーメンのミールキット」だった。
米国で美味しいラーメンを食べようと思えば、都市部まで車を30分ほど走らせ、それから駐車場を探して、列に並び、店員に注文を取ってもらうのを待ち、と非常に手間がかかる。そこに目をつけ、自宅で手軽に本格的なラーメンが食べられるようにすべきだ、と考えた。
もちろん、長谷川はゼロの状態からミールキットをつくる方法を知らない。最初の頃は他のミールキットサービスを試しながら、知識を身につけていったという。そして、この事業アイデアは本当に需要があるのか。それを試すためにKickstarterでプロジェクトを立ち上げ、反応を伺ってみることにした。
結果は長谷川の予想を遥かに上回るもので、2日と経たず目標金額を達成。「これは大きな事業になる」と確信を得て、事業の立ち上げに本格的に本腰を入れることにした。
Evernoteに書いた、5年越しの夢が実現
2018年1月より本格的に販売をスタートし、プロダクトの体験を磨くため、カリフォルニア州のみでサービスを展開していた。だが、最終的には全米の顧客にこの体験を届けたい。全米への展開が近づいてきたこともあり、事業を成長させるヒントときっかけを掴むため、アクセラレーターへの応募を決意する。それが「AngelPad」だった。
「サンフランシスコに来て間もない25歳の当時、5年後の30歳の頃に、自分が達成していたいこと、なっていたい姿を、出来る限り詳細に、Evernoteに100個書き出していました。その中のひとつが『AngelPadを卒業済み』でした。当時すでにいくつかの著名なアクセラレーター、例えばY Combinatorや500 Startupは、日本人起業家が参加済みでしたが、AngelPadに入った人はまだ誰もいなかったので、純粋にどんなものなのか好奇心がありました。また、プログラム自体の評価も毎年非常に高く、少数精鋭でパートナーが徹底的にメンタリングしてくれるスタイルも魅力に感じていました」