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2019.04.18 12:00

海外でも自宅で美味しいラーメンを ラーメン愛が突き動かした、日本人起業家の挑戦


「この事業でナンバー1を狙えるのか。言い換えると、自分がこの事業にとって世界で最もベストな起業家だと、と自信を持って言えるだろうか。自問自答していく中で、この問いに対して確信を持てていない自分がいることに気が付きました。その確信を持てる事業に、自分は取り組むべきだと考えました」

渡米後、初めて可能性を見出せた事業アイデアも志半ばで断念。自分は何のためにサンフランシスコに来たのか……。悶々と心の中でそう呟きながら、失意の中で足を運んだのがラーメン屋だった。

「ラーメンが昔から大好きで、週7日食べても苦ではない。東京に住んでいた頃には、1000店舗以上は足を運びました」と自分で語るほどの“ラーメン通”である長谷川。しかし、渡米してからというもの、現地のラーメンの決して高いとは言えないクオリティにうんざりし、ラーメンを食べない日々が続いていた。

「大好きなラーメンを食べたら、良い気分転換になるのではないか。そう思ってYelpを使い、現地で評価の高いラーメン屋さんを調べて行ってみました。ところが、そこで出てきたラーメンを口にしてみたら、それがまた美味しくなくて……元気になるどころか、ますます落ち込んでしまいました」

日本では街中を少し歩けば、すぐに美味しいラーメン屋を見つけることができる。またコンビニのカップラーメンも有名ラーメン店とコラボレーションしたものが販売されているなど、年々、クオリティは向上している。しかし、米国では状況は異なるという。

過去数年で、米国におけるラーメンの専門店は推定1600店舗に増えるなど、ラーメン市場は年々成長しているが、味のクオリティが店舗ごとに異なる。

例えば、日本のラーメン屋はみんな“サッと食べて”出ていくため回転率が良いが、米国ではラーメン屋はゆっくり食事を楽しむ場所と認識されており、回転率が悪い。そのため店舗側は、単価を確保するためにたこ焼きや唐揚げなどラーメン以外の商品も提供しなければならず、ラーメンのクオリティ向上だけに集中することが難しい。

多くのラーメン屋が、流行りのラーメンをメニューに取り入れるために、出来合いの濃縮スープや粉末のスープをお湯で割ってつくっているため、どこも代わり映えしない味になっている。また中には、見よう見まねで自作しているものの、お湯に醤油を入れただけではないかと思うようなスープにも遭遇したことがあるという。

「本格的なラーメンを提供しているお店は全体の5%程度で、残りの95%は正直まだまだあまり美味しくありません。東京で食べられるような、本格的なラーメンを食べようと思ったら、1〜2時間くらい並ばないといけない。美味しいラーメンをみんな求めているのに、アクセスしづらいのです。ただ、行列が出来る店とできない店があるということは、米国人もクオリティの違いを明確に感じるということ。米国ラーメン市場は伸びて続けているのに、美味しい店は少ない。そのギャップに、大きなチャンスを感じました」
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文=新國翔大

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